研究課題
本研究では、対人コミュニケーション能力に障害のある自閉症スペクトラム障害患者の感覚・運動特性に注目し、成人の発達障害の専門外来をもつ昭和大学附属烏山病院との共同研究により研究を行ってきた。26・27年度は,ASD者の基本的眼球運動特性を調べた。その結果,ASD者の固視眼球運動がとくに視覚ターゲットがない場合に安定性が低下することを明らかになった。視覚ターゲットがない状況では,眼筋の固有感覚等の網膜外情報を用いて眼球運動をコントロールする必要がある。そのため実験結果は,ASDの網膜外情報を利用した感覚運動障害を示唆している。つづいて視覚探索中の眼球運動を調べたところ,ASD群と定型発達群では固視数やサッケード振幅などに有意な違いがみられなかった。しかし,ASD群は定型発達群よりも優れた視覚探索成績を示した。以前からASD児やASD成人が優れた探索成績を示すことは知られていたが,なぜこの優位性が生じるかはわかっていなかった。申請者は,視覚探索課題を瞬間的に提示し,視覚探索過程のとくに並列的な処理過程に注目し,ASD群と定型発達群の成績を比較した。その結果ASD群は,ターゲットの弁別性や刺激数によらず,RTベースラインが100-200ms程度低下することが明らかになった。この結果は,ASD群の並列処理過程における優位性を示唆している。また,従来の視覚探索モデルでは,色や方位などの基本的特徴だけが並列的に処理されると考えられてきたが,ASD者はより複雑な視覚情報を並列的に処理している可能性がある。ASDの主な特徴は社会コミュニケーションの障害であるが,感覚や感覚運動機能にも特異性があることが明らかになってきた。これらの結果は,国内外の学会で報告し,Autism and Developmental DisordersやAutism誌に採択された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Autism and Developmental Disorders
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Autism