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2014 年度 実績報告書

大気海洋生物化学循環モデルを用いた地球表層酸化還元環境史の解明

研究課題

研究課題/領域番号 13J09134
研究機関東京大学

研究代表者

原田 真理子  東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード酸素濃度 / 全球凍結
研究実績の概要

地球大気中の酸素は,地球誕生直後にはほとんど存在しなかったが,原生代初期(約22億年前)と原生代後期(約6億年前)の全球凍結イベント後に急激に増大したことが地質記録から示唆されている.酸素濃度上昇イベントと同時代には最古の真核生物と多細胞動物の化石がそれぞれ産出していることから,全球凍結イベント,酸素濃度上昇,そして生命進化との間の関連性が古くから注目されてきた.酸素濃度上昇イベンの原因,メカニズム.全球凍結との因果関係を明らかにすることは,地球生命史を理解する上で非常に重要である.さらに近年の新しい知見として,原生代初期酸素濃度上昇イベントが単なる一方向的・短期的なものではなく,億年スケールの大規模なオーバーシュートを伴っていたらしいことが明らかになってきた.本年度はこの“オーバーシュート仮説”に着目し,全球凍結によってこのような大規模酸素濃度変動を示す地球化学記録を説明できるか検証した.
鉛直一次元海洋生物化学循環モデルと大気光化学反応を組み込んだ大気‐海洋結合ボックスモデルを用いて計算したところ,スノーボールアース・イベント後には急激な酸素濃度上昇に伴って,海洋中硫酸イオン濃度が大きく上昇することが分かった.硫酸イオン濃度が上昇した環境は約1億年継続する.一方,酸素濃度のオーバーシュートに伴って,海洋の深層まで富酸素化することも明らかになった.さまざまな氷河時代の規模を想定して感度実験を行った結果,前述の地球化学記録を最もよく説明するのは,全球が完全に凍結する“ハードスノーボールアース”を想定した場合の計算結果のみであることもわかった.以上の結果からは,全球凍結イベントが地球化学記録によって示唆される酸素濃度オーバーシュートの原因となりうることが示唆される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は近年提唱されるようになってきた酸素濃度のオーバーシュート仮説に着目し,研究を行った,当初計画では,海洋鉛直一次元モデルに微量金属元素であるモリブデンの挙動を導入することにより計算結果と地質記録との比較を行なう予定であった.しかし,オーバーシュート仮説検証には貧酸素環境下における硫黄循環をモデルに導入することがより本質的であったため,本年度は既存の海洋鉛直一次元モデルの硫黄循環を改良することを主な目的として研究を行なった.その結果,スノーボールアース・イベントによって酸素濃度オーバーシュート仮説が説明できることを示すことができた.この研究の一部は国際誌に論文として投稿し,掲載された.また,国際学会で口頭発表・およびポスター発表を行なったほか,国内学会においても口頭発表した.したがって,酸素濃度上昇イベントを数理モデルにより定量的に理解し,地質記録と比較するという本研究は,おおむね順調に進展しているといえる.

今後の研究の推進方策

本年度の研究によって,原生代初期酸素濃度イベントの理解が大きく進んだと言える.今後の課題は,原生代後期酸素濃度上昇イベントの原因・メカニズム・上昇レベルや時間スケールを定量的に明らかにすることである.また,これら酸素濃度上昇イベントが生命進化に与えた影響についても,明らかにする必要が有る.これらの課題をふまえて,今後は以下の2点について研究をおこなう.1点目は,原生代後期酸素濃度上昇をターゲットにした計算をおこなうための数理モデルの開発である.開発した数理モデルを用いて本年度と同様の計算を行ない,原生代後期酸素濃度上昇イベントは全球凍結によって説明できるのか,オーバーシュートは起こるのか,といったことについて明らかにする.2点目は,分子系統解析を用いたシアノバクテリア抗酸化酵素進化史の解明である.酸素濃度上昇イベントは,海洋表層に生きるシアノバクテリアの活性酸素に対する耐性に影響を与えたはずであり,この情報が現存の生物の遺伝子に記録されている可能性がある.シアノバクテリア抗酸化酵素の分子系統解析から,本年度までの酸素濃度計算結果により示唆される酸素濃度上昇イベントが生命進化に与えた影響について見積もり,かつ計算結果をサポートする生命科学的な酸素濃度の代理指標の開発を行なう.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Transition to an oxygen-rich atmosphere with an extensive overshoot triggered by the Paleoproterozoic snowball Earth2015

    • 著者名/発表者名
      Harada, M., E. Tajika, Y. Sekine
    • 雑誌名

      Earth and Planetary Science Letters

      巻: 419 ページ: 178,186

    • DOI

      doi:10.1016/j.epsl.2015.03.005

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Overshoot of atmospheric oxygen caused by the Paleoproterozoic snowball glaciation: constraining its magnitude and duration from biogeochemical cycle modeling2014

    • 著者名/発表者名
      Harada, M., K. Ozaki, E. Tajika, Y. Sekine
    • 学会等名
      2014 AGU Fall Meeting
    • 発表場所
      San Francisco, USA
    • 年月日
      2014-12-15 – 2014-12-19
  • [学会発表] Modeling dynamics of the rise of oxygen during the Paleoproterozoic: deep water oxygenation and sulfate accumulation in the post-snowball ocean2014

    • 著者名/発表者名
      Harada, M., K. Ozaki, E. Tajika, Y. Sekine
    • 学会等名
      2014 GSA Annual Meeting
    • 発表場所
      Vancouver, Canada
    • 年月日
      2014-10-19 – 2014-10-22
  • [学会発表] 数理モデルによる原生代初期酸素濃度進化の制約:全球凍結後のオーバーシュートと深海の富酸素化2014

    • 著者名/発表者名
      原田真理子,尾崎和海,田近英一,関根康人
    • 学会等名
      2014年度日本地球化学会第61回年会
    • 発表場所
      富山大学(富山県富山市)
    • 年月日
      2014-09-16 – 2014-09-18

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公開日: 2016-06-01  

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