研究課題/領域番号 |
13J09150
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 仁徳 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Paddle-wheel型Cu(II)錯体 / 単結晶X線構造解析 / 分子間相互作用 / Hirshfeld表面解析 / ガス吸着 / 構造相転移 |
研究実績の概要 |
ガスの吸脱着をバイアスとした分子運動と強誘電物性の融合システムの開発を目的に、pyrazine (pz) 架橋Paddle-wheel型Cu(II) 一次元ポリマー錯体を用いた構造-物性相関の評価を行った。これまでに、m-位に極性置換基を導入した一次元鎖paddle-wheel型Cu(II) 錯体を作製し、benzoate部位の分子間相互作用が物性に影響していることを明らかとし、論文発表を行った。本研究では、さらなる分子間相互作用とガス吸着特性の制御を目的に、p-位に嵩高い置換基を有する配位子を導入した一次元鎖Cu(II)錯体 [Cu(II)2(p-chlorobenzoate)4(pz)]n, [Cu(II)2(p-bromobenzoate)4(pz)]n [Cu(II)2(p-iodobenzoate)4(pz)]nおよび [Cu(II)2(p-methoxybenzoate)4(pz)]n を作製し、その結晶構造ならびにCO2およびN2ガス吸着特性についての検討を行った。結晶構造解析から、これらの錯体結晶の初期構造中に空孔が存在していないことを確認した。また、p-位の置換基によって鎖間相互作用に違いが見られ、Hirshfeld表面解析による評価では、ハロゲン元素を置換基に有する3つの錯体において、ハロゲン原子のサイズが大きくなるに従って鎖間相互作用が増加することが確認できた。また、メトキシ基を有する錯体では、van der Waals (vdW) 相互作用が支配的に働いており、中でもCH-pi相互作用がvdW半径以上に短い距離で構造の安定化に寄与している事が判明した。CO2およびN2 吸着等温線の測定から、4種類の錯体の吸着特性に違いが見られた。これは、鎖間相互作用の強い錯体ほどガス吸着が抑制される結果であり、構造柔軟性とガス吸着特性の相関を捉えたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
p-位に嵩高い置換基を持つ配位子を導入した一連の銅二核錯体ポリマーの作製から、構造-ガス吸着特性の相関を明らかとした。特に、錯体系分子に対して初めてHirshfeld表面解析を適用し、分子間相互作用の違いを定性的かつ簡便に評価する手法を提示した点は大きな研究成果である。ガス吸着と分子運動が連動した理想的な物性発現システムの作製に向けて、分子間相互作用の設計と評価に関する今後の方向性を見出した点が高く評価される。
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今後の研究の推進方策 |
ガス吸着特性と分子運動が連動した物性発現システムの構築の中で、錯体結晶の分子間相互作用の評価にHirshfeld表面解析が有用であることを見出し、分子間相互作用とガス吸着特性の相関を明らかとする事に成功した。簡便な評価手法による適切な分子間相互作用の設計により、多重物性制御が可能である。本研究課題の今後の推進方策として、安息香酸の4-位に嵩高い置換基(R)、2,3-位に極性置換基(X)をもつ配位子を導入した錯体[Cu(II)2(4-R-3-Xbenzoate)4(pz)]n を作製し、その構造-物性相関に関する評価を試みる。
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