研究課題/領域番号 |
13J09193
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
森 尚平 立命館大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複合現実感 / 隠消現実感 / Image-based rendering / カメラ位置獅子絵推定 |
研究実績の概要 |
本年度は,対象となる実物体を視覚的に隠蔽・消去・透過する技術,隠消現実感 (Diminished Reality; DR) に関して,昨年度の成果を発展させることを目標とした. 1.事前観測型DR (Pre-Observation-Based DR; POB-DR) に関して,昨年度までに完了させた「手法の効果を評価・実証するための実験用スタジオの設計・構築」を利用して,グランドトゥルースとDR処理結果との具体的な比較方法や結果画像評価指針についての検討を行った.また,そのためにデータセットを試作し,運用テストを実施した. 2.昨年度には,POB-DRに関する基礎的なフレームワークを完成させた.即ち,隠背景観測・データ化・実時間再構成の問題を「隠背景が平面である場合」と「隠背景の幾何形状が複雑な場合」という両極端な場合に分け,対処法を実装した.本年度は,両手法が有効に機能することを上記のデータセットを用いて実証した. これらの手法を実世界に適用する際に問題となるのは,体験者の位置姿勢や実行時のカメラの位置姿勢推定,即ち,現実空間と仮想空間の幾何位置合わせ問題である.特に,屋外における自然景観を対象とした場合,物理的なセンサの利用や人工マーカを設置する方法は適当ではなく,景観中の画像特徴点を活用する方法が好ましい. そこで,POB-DRにおいて事前取得可能な情報を最大限に利用する方策を取った.つまり,POB-DRにおいては,対象となる実シーンを事前に観測できることから,その3次元構造とテクスチャー画像 (Textured 3D Model; T-3DM) が事前に取得できる状態にあるため,これを効果的に利用する手法を開発した.具体的には,T-3DMのレンダリング結果と観測されたシーンの画像とを比較することで,T-3DMの色調補正処理を実行し,それに続くカメラ位置姿勢推定に反映させた.結果,カメラ位置姿勢推定精度の向上とDR処理結果の精度向上が同時達成された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,打ち立てた2つの研究課題の内の1つである「隠消現実感」の研究開発が大きな進展を見せ,国内外の学会で発表を行うとともに,学術論文としての投稿を果たした.研究実績の概要にある通り,計画に即してカメラ位置姿勢推定機構の開発とDRの精度向上の両方を達成した.また,当該研究者への公開を視野に入れたデータ計測を開始し,順調にデータを蓄積している.また,国際会議おいてこのデータ計測に関する発表が賞を受賞するなど,当該研究者からの注目度も高い.英語論文の採録こそなかったものの,その代わりに,当該分野の中でも最も著名な国際会議のひとつであるISMARにおいて開催されたDR Tutorialにて招待講演を行った点は評価に値する.実際,これにより当該研究者からの多くのフィードバックが得られた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎えるため,これまでに開発したカメラ位置姿勢推定法や光学的不整合の軽減法の統合を進める.また,これまでに蓄積してきたデータセットやDR手法の評価方法の検討を通して明確になった検討項目を集中的に実験・改良していく予定である.この評価には当然,昨年度までに構築・確立した実験システム及び方法を利用する.自らの研究だけでなく,当該研究者への配布を視野に入れて,実験用データの取得と蓄積を更に進める予定である.
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