研究課題/領域番号 |
13J09234
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新垣 陽子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多細胞化 / 群体性ボルボックス目 |
研究実績の概要 |
申請者は、多細胞化のモデル生物群 (単細胞から多細胞にかけての進化的中間段階の種を多く含む) である緑藻ボルボックス目藻類のうち、最も初期に分岐した4細胞性緑藻テトラバエナ (学名: Tetrabaena socialis) を用いて、単細胞から多細胞への転換期に起きた進化を解明することを目的に研究を行っている。テトラバエナを用いて単細胞から多細胞への転換期の進化を分子レベルで解明するためには、ゲノム情報は有効なツールになると考えられる。ボルボックス目藻類では、単細胞性のクラミドモナス (Merchant et al. 2007 Science) と最も複雑化した多細胞性のボルボックス (Prochnik et al. 2010 Science) でゲノムが利用可能であり、テトラバエナのゲノム情報を合わせることで多細胞化のキーとなる遺伝子の探索が可能になるはずである。 申請者は昨年度から、テトラバエナのゲノム解読をめざし、南アフリカのグループにシーケンシング、アセンブル等を依頼している。本年度は、より精度の高いアセンブル、アノテーションのために、培養株からtotal RNAを抽出し、解析を行っている。暫定的ではあるがドラフト配列を用いてBLAST検索が実施できるようになったため、それを用いて多細胞化に伴って複雑化したことが予想される遺伝子を検索し、系統解析を実施した。それによって複数の候補遺伝子のホモログが同定でき、現在それら遺伝子の発現解析を実施している。また、遺伝子発現は細胞の発生ステージによって異なることがあるため、解析には細胞齢を均一にする同調培養系の確立が必須であり、培養条件を検討した結果、一部同調培養が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲノム配列を扱うことや系統解析に不慣れであったために、かなり時間を費やしてしまった。また、細胞のステージを揃える同調培養系の確立でも、条件を変更するごとに数週間継続しての培養・観察が必要であったためにやや遅れ気味であると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、テトラバエナのドラフトゲノム配列が利用できるようになり、遺伝子の探索がかなり効率よく行えるようになった。また、ある程度同調培養の条件もしぼれてきているので、4細胞性のテトラバエナをはじめとする群体性ボルボックス目の各進化段階のステージを追って、遺伝子の発現解析を開始している。それによって、群体性ボルボックス目藻類において、多細胞化に伴って進化したと考えられる遺伝子、すなわち多細胞化に重要だと考えられる遺伝子の動態を解明していく。
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