研究課題/領域番号 |
13J09259
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
会田 大輔 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 北周 / 帝王略論 / 侍街 / 遊牧管制 / 墓誌 |
研究概要 |
今年度は、研究実施計画に基づき、以下の研究を進めた。 まず、隋唐時代の多様な南北朝歴史像を復元するために欠かせない唐初の虞世南撰『帝王略論』の校訂を進めた。その過程で『帝王略論』の佚文を求め、中国・日本の稀見類書の佚文調査を行った。その結果、北宋の晏殊撰『類要』から、『帝王略論』の佚文を発見した。さらに『帝王略論』の文章を引用している[唐]馬総撰『通暦』の佚文も発見した。この『類要』所引『通暦』佚文を検討した結果、『帝王略論』の一部であることが判明した。その研究成果を論文化し、「『類要』中の『通暦』佚文について」(『汲古』第63号、2013年)として公表した。従来知られてない『帝王略論』の三国魏に関する佚文が発見され、『帝王略論』の校訂がより進んだとともに、唐初の三国時代観の一端が明らかとなった。 そのほか、西魏・北周の歴史像の再検討も進めた。まず、北周武帝親政期・宣帝期の皇帝側近官の人的構成を分析し、両時期に人的連続性が存在したことを明らかにし、「北周武帝親政期・宣帝期における側近官の人的構成」(『明大アジア史論集』第18号、2014年)を公表した。また、平成25年度東洋史研究会大会(於京都大学・2013年11月3日)において、「北周侍衛考」と題する報告を行った。本報告は、北周の皇帝侍衛(宮伯・諸侍)の官制・職掌・就任者を分析し、遊牧官制の影響が看取できることを指摘したものである。続いて、明治大学で開催された第3回"中国中世(中古)社会諸形態"国際大学院生若手研究者学術交流論壇(2014年3月1日)において、「北周司会考―六官制の構造をめぐって―」と題する報告を行った。本報告は、北周の六官制のうち、司会について検討した。その結果、従来司会は財務長官と認識されてきたが、実際には政策伝達を担い、覇府幕僚を兼任・歴任することで北周の権力者を支えていたことが判明した。また、梶山智史編『北朝階代墓誌所在総合目録』(汲古書院、2013年)および目録刊行後に公表された西魏・北周・階代の墓誌(拓本写真)を網羅的に調査し、皇帝・権力者や戦争・重大事件に関する記述を中心に内容の把握に努め、全体的傾向について分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北周・隋代の墓誌の網羅的調査が順調に進展し、全体的傾向を把握できた。その結果、同時代(北周・隋)の皇帝・権力者像が浮き彫りになり、墓誌の史料的価値と限界性が明確になってきた。また、多様な南北朝歴史像の復元については、『帝王略論』の校訂が完成に近づいた結果、唐初における南朝系官僚の歴史認識の解明が進んでいる。これらの点から、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究報告を順次論文化し、雑誌論文として公表する予定である。並行して、『帝王略論』の校訂を完成させ、公表する予定である。また、多様な南北朝歴史像を復元するため、史料収集につとめる。特に石刻史料の調査を進めるため、現地調査を行う予定である。
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