研究概要 |
イプシロン型-酸化鉄(ε-Fe_2O_3)をベースとして、新しい磁気特性・電磁波吸収特性の観測を目指し、本年度は以下に示す研究を行った。 1. 球状In置換型ε-Fe_2O_3(ε-In_xFe_<2-x>O_3)の合成および電磁波吸収特性の観測 逆ミセル法とゾルゲル法とを組み合わせた手法によりε-In_xFe_<2-x>O_3を合成した。透過型電子顕微鏡像から、得られた試料は球状のナノ粒子であることがわかった。粉末X線回折から、いずれの試料も斜方晶系の結晶構造であることが示され、Inイオンは4種類あるFeサイトのうち特にBサイトを選択的に置換していた。磁気特性を調べたところ、In置換により保磁力は減少していた。また、テラヘルツ時間領域分光法により電磁波吸収特性を測定したところ、吸収周波数はIn置換量の増加に伴い減少した。この吸収周波数の減少は、ε-Fe_2O_3の磁気異方性を担っているとされるBサイトのFeイオンを、非磁性のInイオンで置換したことにより磁気異方性が低下したことに起因していると考えられる。[J. Appl. Phys.,査読有, 115, 172613 (2014)] 2. Rh置換型ε-Fe_2O_3(ε-Rh_xFe_<2-x>O_3)の大量合成および高周波ミリ波吸収の観測 ゾルゲル法を用いてε-Rh_xFe_<2-x>O_3を合成した。ε-Rh_xFe_<2-x>O_3の結晶構造には4種類の非等価なFeサイトがあるが、Rhイオンは選択的にCサイトを置換することがわかった。ε-Rh_xFe_<2-x>O_3のミリ波領域における電磁波吸収特性を、テラヘルツ時間領域分光法を用いて評価した。その結果、Rhイオンの置換量の増加と共に吸収周波数が高周波化し、世界最高記録の222GHzを観測した。[J. Mater. Chem. C, 査読有, 1, 5200-2506 (2013)]
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