研究課題/領域番号 |
13J09268
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山本 京祐 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(PD)
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キーワード | 進化生態 / 微生物 / 日和見感染菌 / 競争 / ゲノム進化 / 群集動態 |
研究概要 |
本年度は、競合関係にある2種の病原性細菌、緑膿菌と黄色ブドウ球菌(以外PAおよひSAと略記)による進化実験系の構築と個体群・進化動態の特徴付けをおこなった。静置培養条件でPA純粋培養系とPA-SA共培養系の継代培養をおこない、生菌数変化とコロニー形態の変化した株(Colony Morphology Variants, CMVs)の割合を測定した。その結果全ての系においてCMVsが検出された。全ての系で祖先型のコロニー形態を示すものは淘汰され、Umbonateコロニー(Um)、Wrinklyコロニー(SW、FCW)やSmooth (Sm)コロニーが優占種となった。最終的にほぼ単一の進化株が優占する系と複数の優占種が共存する系がみられた。PA純粋培養系ではUmやSW、FCWが、SAとの共培養系ではUm、SW、FCWの他に、Smが優占化する系統がみられた。このように、SAが共存することでPAの進化動態に影響を及ぼすことが明らかとなった。 CMVsはほぼ全ての株でバイオフィルム形成能が祖先株に比べて向上していた。一部のWrinkly CMVsは運動性(twitching motility)が低下し、Smooth CMVsでは全ての株が運動性を失っていた。また、PAは二次代謝産物pyocyaninの生成量が変化していることが示唆された。PyocyaninはSAの生育を阻害するため、pyocyanin産生能の変化は両株間の相互作用様式を大きく変化させる可能性がある。 祖先株とCMVs、合計12株のゲノムリシークエンスをおこったところ、SNPやIndelが検出されたORFのうち、機能既知の遺伝子は細胞内シグナル伝達系や運動性に関与するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、進化実験系の構築と進化株の生理・遺伝学的解析をおこない、対象菌株の基本的な個体群・群集動態ならびに進化動態を把握することができた。これらの結果は当初の研究計画で予定されていた研究項目であり、次年度の研究計画の土台となるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はおおむね順調に進展しており、当初の研究計画に沿って今後も研究を推進していく予定である。研究遂行上大きな問題点は無いが、ゲノム解析の対象とする進化株が当初の予定よりも多数になったことから、必要に応じて現行以外の他のゲノム解析手法の導入も検討する。
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