研究課題/領域番号 |
13J09268
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山本 京祐 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 進化生態 / 微生物 / 病原菌 / 競争 / ゲノム進化 / 群集動態 |
研究実績の概要 |
前年度に実施した進化実験(緑膿菌PAと黄色ブドウ球菌SAを使用)を再施行したところ、全ての進化実験系において実験開始から3~5日後にはPAのColony Morphology Variants(CMVs)が検出され始め、時間経過とともに種類も増加した。前回の結果と合わせて解析した結果、PA-SA共培養系でのみ検出されるPA進化株は検出できなかったものの、初期段階におけるPAの多様化の抑制や、PAの進化軌道の変化がみられ、共存するSAがPAの進化動態に様々な影響を及ぼすことが明らかとなった。個体群構造の再解析、CMVsの遺伝学・生理学的解析等によって、より詳細な個体群動態・進化動態解析をおこなったところ、ゲノム変異や生育能、二次代謝産物産生能などの変化がみられ、遺伝学的にも生理学的にも多様化が進行していることが示された。一方、SAのCMVsに関しても解析をおこなったところ、抗生物質耐性能の変化等を検出したことから、SAの進化動態もPAの影響を大きく受けていることが確認された。また、PAのCMVsの中でも特徴的な進化的挙動を示したSmooth(Sm)株に関して、より詳細な特徴付けをおこなった。Sm株は運動性(twitching motility)を失っていたが、遺伝子破壊によって作製した運動性欠損株との比較実験の結果、Sm株の適応優位性は運動性の欠損だけでなく他の要因との複合的な効果の結果であることが示唆された。より実環境に近い条件での実験(人工痰培地を用いた実験)ではSm株の優占が頻繁にみられたことから、Sm株の生理学的・進化学的特性は興味深いものであるといえる。このように、モデル微生物系を用いた進化実験によって、病原菌の進化動態に種間相互作用が大きく影響することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、進化実験の再施行と進化株の生理・遺伝学的解析をおこない、共培養系における対象2菌株の個体群・群集動態ならびに進化動態を詳細に解析することができた。また、数理解析(Massey大学と共同で実施)も開始しており、当初の研究計画で予定されていた研究項目を先行しておこなうことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はおおむね順調に進展しており、当初の研究計画に加えて他種菌株を使用した比較実験も実施しつつ、今後も研究を推進していく予定である。
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