研究課題/領域番号 |
13J09308
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
逢坂 良樹 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 局在表面プラズモン / 量子光学 / 非線形光学応答 / 離散双極子近似 |
研究実績の概要 |
微小金属の光アンテナとしての機能に着目し、微弱な光による高効率な非線形光学応答を目指して理論的に研究を行っている。これまでの研究では、単一の微小金属とその近傍の分子の光学応答を解析し、金属と分子の電荷振動の干渉効果により金属の損失を抑えて分子の高効率な非線形応答が実現可能であることを明らかにした。デバイス化を見据え、複数の微小金属と分子が存在する場合について線形応答の範囲内で解析すると、条件によっては分子同士の放射場を介した相互作用が現れることがわかった。そこで、平成26年度の研究目的は、分子間の相互作用が顕著に現れる条件を明らかにし、そのような効果を積極的に考慮した非線形光学応答の理論を構築することであった。 まず、複数の微小金属と分子が配置された場合について、分子の位置や入射偏光の向きの依存性を調べた。その結果、分子が微小金属による増強電場の領域にあるとき、分子同士が空間的に離れていても大きな分子間相互作用が現れることがわかった。続いて、よりデバイス構造に近い系での議論を行うため、周期的な構造の解析が可能となるように数値シミュレーションの改良を行った。そして、周期パターンや周期の間隔が分子間の相互作用に大きく影響することがわかった。これは、微小金属が作る増強電場が金属構造に依存するためであり、デバイス化には周期構造の数値シミュレーションが必要不可欠であるといえる。以上の解析は、線形応答の範囲内で計算されたものであり、非線形光学応答について調べるためには、新たな理論を構築する必要がある。従って現在、金属と複数の分子における非線形応答光学応答について、分子間の相互作用を考慮した量子論に基づく理論解析に取り組んでいるところである。以上のように、26年度は研究実施計画に基づいて順調に研究を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は、離散双極子近似による電場の数値シミュレーションを行うことにより、微小金属近傍の分子間に現れる分子間相互作用が顕著になる条件を明らかにした。また、周期的に配列された構造についても調べた。これらは集積構造などデバイス化を想定したときに必要不可欠な議論である。以上は線形応答の範囲で解析しているため、現在、分子間の相互作用を積極的に考慮した非線形光学応答の理論を構築中である。以上から、本研究課題の当初研究目的の達成度について、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、分子間の相互作用を積極的に考慮した非線形光学応答の理論の構築に取り組んでいる。まずはその理論を完成させ、2個の分子が金属ナノ粒子の近傍にある場合について調べていく。具体的には、分子の位置や偏光などの依存性を調べ、分子間の相互作用と非線形光学応答の関係性を明らかにする。また、分子が高密度に多数存在する場合や、金属近傍の大きな近接場中に分子が存在する場合などについては、分子間の相互作用が大きくなると考えられる。このような系において、分子間相互作用を積極的に利用した新規光応答の可能性を検討する。以上のようにして、高効率な非線形光学応答デバイスの最適な系の提案を行う。
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