研究課題/領域番号 |
13J09339
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 雄介 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トランスポゾン / ウイルス / ゲノム / メダカ |
研究実績の概要 |
トランスポゾンは生物のゲノム上を転移するDNA配列であり、あらゆる生物種に普遍的に存在する。その転移は遺伝情報を変化させるため、宿主生物種のゲノム進化に寄与していると考えられている。当研究室の先行研究により、メダカDa変異体の原因因子として少なくとも42 kb以上である大型の新規DNAトランスポゾンが見出され、Albatrossと命名された。Albatrossの挿入が原因と推定されるメダカ変異体は他にも複数報告があり、メダカゲノムにおいて強力な変異原になっていることが示唆されていた。しかし、その全配列は決定されておらず、転移酵素、サイズ、内部構造の特徴、転移活性の有無などは不明であった。 昨年度までの研究により、Albatrossはヘルペスウイルスゲノムを内包した、長さ180 kbを上回る巨大なpiggyBac型DNAトランスポゾンであることが分かった。これを受け、Albatrossはトランスポゾンの転移機構を二次的に獲得して宿主ゲノム内に内在化したヘルペスウイルスであるという仮説を立てた。これを検証するために、①転移活性の有無、および②Albatross由来のウイルス粒子の産生の有無を解析した。 ①については、培養細胞への遺伝子導入実験により、Albatross末端配列に挟まれたDNA配列が転移酵素を介して転移することを示した。一方②については、ヘルペスウイルスを活性化させることが知られている薬剤をメダカ培養細胞に処理し、その応答を調べた。その結果、DNAメチル化阻害剤である5-アザシチジン処理により転写量はやや上昇したが、タンパク質の合成は確認されなかった。以上まとめると、Albatrossは転移活性を保持していることは示されたが、ウイルス粒子の産生は実証されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Albatrossの転移活性を検証することは出来たが、ウイルス粒子の存在は検証できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
Albatrossは巨大であるという点できわめてユニークなトランスポゾンであるが、現時点では数kbの配列の転移しか実証できていない。そこで今後はAlbatross全長の転移の検証を行う。ウイルス粒子産生の検証実験については、ウイルスタンパク質の合成をもたらす条件の模索を引き続き行う。見つかった場合、電子顕微鏡観察によりウイルス粒子の存在を検証する。
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