MCI高齢者を対象に運動介入が認知機能に及ぼす効果をランダム化比較試験により検証した研究は実施例が少ない上に、その効果は限局的で一貫性をもった結論を得るまでには至っていない。これらの研究における問題点は、運動介入方法の定義が不明瞭な点であり、どのような時間・内容(強度)・頻度の運動介入がMCI高齢者の認知機能に影響を及ぼすかについて精査されずに実施されている点である。それらを明らかにすることが本研究の中心的課題である。 平成26年度の主な研究実績としては、平成25年度に実施した研究から得られた成果を論文化し、国際誌への投稿・掲載を行った。MRI画像指標と身体活動量から、脳萎縮の程度が身体活動の中でも、中等度以上の強度(3METs以上)で行われている活動に対し有意に関連性を示し、白質病変などの潜在的介在因子により調整を行っても、それらの結果は保たれていた。これにより、身体活動の中でも中強度以上の強度に設定されたプログラムの実施が望ましいと考えられる。さらに、介入研究のプログラム開発として行った検討から、運動時に認知課題を負荷することにより認知機能向上に効果があるかもしれない可能性を、dual-task(同時課題)を用いた実験により示した。軽度認知障害を有する高齢者を対象に、歩行時に計算課題を行い、dual-task歩行時の機能指標が認知機能と関連しているかについて検討したところ、遂行機能や記憶といった領域との関連性が認められた。これらの結果は、各介在因子により調整を行っても有意性が保たれていた。これらの結果から、プログラム内容としては強度と課題設定について注目すべき必要があり、かつ高齢者の人が持続的に取り組めるようなプログラムの開発が重要になると考えられる。
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