研究課題/領域番号 |
13J09449
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鎌田 弥生 順天堂大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 神経反発因子 / かゆみ / アトピー性皮膚炎 / 発現制御 |
研究概要 |
皮膚バリアが破綻しているアトピー性皮膚炎(AD)や乾皮症の痒みは抗ヒスタミン薬が奏功しない「難治性の痒み」である。特に、ADの皮膚は乾燥とそれに伴うバリア機能の破綻のため、外部刺激による痒みや炎症が発生しやすく、その痒みは強い掻破行動と湿疹の増悪をもたらし、患者のQuality of Life (QOL)を大きく障害する。しかし、それらを制御する方法は解明されておらず、幅広い視点に立った病因解明と新規治療薬の開発が切望されている。このような背景を受けて本研究は、皮膚のバリア機能破綻に伴う難治性痒みの発現機序の解明と新規治療薬の開発を目的としている。平成25年度は、痒みの難治化の鍵となる神経反発因子セマフォリン3A (Sema3A)に着眼し、表皮角化細胞におけるSema3Aの発現制御機序を分子レベルで解明することで、内在性Sema3Aの発現を誘導するADの新規止痒薬の開発を目指した。 ヒトSema3Aプロモーター領域を5'末端側から数百塩基ずつ欠失させた変異体のルシフェラーゼアッセイにより、Sema3A発現の促進に関わるPositive領域を同定した。データベース検索の結果、Positive領域(-134~-44)にはレチノイド関連オーファン受容体α(RORα)/AP-1、Sox、GA結合タンパク質(GABP)等の転写因子結合配列が存在した。候補転写因子の遺伝子発現をsiRNAによって抑制した結果、いずれの候補転写因子の発現を抑制した際にも、Sema3A発現が50%以下まで減少した。さらに、候補転写因子の結合配列を部位特異的に欠失させた変異体を用いてプロモーターアッセイを行ったところ、RORα結合部位を欠失させた変異体でSema3Aの転写活性が劇的に減少した。そこで、RORα作動薬であるSR1078やコレステロール硫酸を含む条件で正常ヒト表皮角化細胞を培養した結果、いずれのRORα作動薬でも有意にSema3A発現が促進された。一方、RORα逆作動薬SR1001は有意にSema3A発現を抑制した。以上の研究成果から、RORαを標的とした内在性Sema3Aの発現促進剤は、新規止痒薬に応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、神経反発因子Sema3Aの発現制御に関わる基本プロモーター領域を解析し、転写因子RORαを同定することができた。平成25年度は研究成果に基づき学会発表や特許出願を行った。現在は研究成果を論文投稿し、審査員のコメントに基づき修正中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究を踏まえ、次年度はADモデル動物を用いてRORα作動薬の止痒効果を解析する。また、表皮角化細胞におけるオピオイド系を介した痒み発生機序に関しても研究を開始する予定である。現時点で研究計画の変更や研究遂行上の問題点は特にない。
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