研究課題/領域番号 |
13J09472
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩原 紘伊 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | オルタナティブ・ツーリズム / バリ島 / 社会運動 / 環境 |
研究概要 |
本研究の目的は、近年の「持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)」への注目を背景に、ポスト・スハルト期インドネシア・バリ島において環境NGOを中心に「もう一つの観光」のあり方として推進される、村落エコ・ツーリズムを巡る動きに焦点を当て、観光という現象に包摂される社会の対応の在り方を追究にすることである。今年度は、インドネシア・バリ島で行った2年間のフィールドワークの成果を博士論文としてまとめる作業に集中した(一部を口頭発表一回、投稿論文一本、事典項目として発表)。 その中で、環境NGOによって推進される村落エコ・ツーリズムは、ポスト・スハルト期に入っても留まる気配を見せない観光開発が助長する環境・社会問題がポスト・スハルト期に進展した民主化や慣習・伝統のリバイバルの動きと相乗的に絡み合うことで、NGO関係者だけではなく知識人層の支持も獲得し展開されていることが明らかになった。加えて、既存のオルタナティブ・ツーリズム研究では、グローバルなレベルで急速に拡大しつつある観光形態をアプリオリなものとして扱いがちでるが、バリ島の事例からは、一見同じことばで語られ表象されるように見えるものの、それは政治・社会・文化的要素によって形成される「在地の論理」に包摂されつつ、実際は在地の新たな観光形態として再生産されていることが分かった。このような在地の論理が付与しうる概念解釈の多様性や観光形態のローカル化において可視的となる力学は、これまであまり研究されてこなかった側面であり、そこに注目することに本研究の意義がある。 今後の研究では、フィールドワークを行った農村と都市の二つの村落を二項対立的に分析するのではなく、村落コミュニティにおいて生きることを下支えする「知」をあり方とローカル化されたツーリズムがいかに接合しうるのかという問題に焦点を当て、補足調査を行いつつ博士論文の執筆を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、これまで行ってきたフィールドワークの成果を整理し、まとめる作業に集中したことで、博士論文の議論の方向性を概ね定めることができた。また、文献研究を通じて、オルタナティブ・ツーリズムのローカル化をめぐる問題など新たな論点を見出すこともできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度の研究成果を積極的に発表し対外的なフィードバックを仰ぎつつ、博士論文の執筆を進めていく。また、研究計画通り8月から9月にかけてインドネシア・バリ島およびジャカルタにおいて、補足調査を実施する。特に、バリ島においては前回の調査において不十分であった自然環境に関わる慣習に関するデータを収集する。
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