本研究は、ポスト・スハルト期のインドネシア・バリ島におけるコミュニティ・ツーリズム推進運動に焦点をあて、その運動に関わるアクターが目指すツーリズムとその背景にある社会問題について考察することを通して、現代のバリにおける人びとの「協働性」のあり様について明らかにすることを目的としている。具体的には、運動を主導する環境NGOと対象村落などその他アクターとの連繋のありかた、および各アクターが持つコミュニティ・ツーリズムについての異なる論理の接合と反発のあり様に注目した。 上記の研究課題を遂行するにあたって、本年度は前年度までのフィールドワークにおいて収集したデータの分析、学会発表とバリ島における2回の補足調査を行った。まず、4月から9月までの間に前年度までのフィールドワークから得られたデータの考察を行い、学会において複数回発表を行った。本年度前半に前年度までに得たデータの考察をもとに、学会で発表を行ったのは、幅広い聴衆からコメントを頂くことで考察を深めていくためである。 一方、上記発表で頂いたコメントを受けて、9月と3月にバリ島において補足調査を実施した。9月の調査では、一連の発表において頂いた指摘をもとに、不足しているデータ部分の収集と不明確なデータの確認作業を精力的に行った。具体的な内容は、参与観察を行ってきた環境NGOと連繋するその他の環境NGO関係者に対する聞き取り調査、および村落部における活動のまとめ役の方々に対して、ポスト・スハルト期に生じた村落共同体内部の政治的変化に関するデータを再確認するために聞き取り調査を行った。また、3月の調査では9月の調査から得たデータとそれまでに得たデータを統合し整理する作業過程で不足が判明した文献資料の収集を中心に行った。 最終的な研究成果は、平成27年度中に提出予定である博士論文としてまとめていく。
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