研究課題/領域番号 |
13J09478
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 綾子 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 国際組織 / 世界保健機関 / 政策形成過程 / 制度形成 / トランスナショナル・イシュー / グローバル・イシュー |
研究概要 |
感染症対策には国防との結びつきの強さ、想定されるreputation riskなど経済的な影響、個人情報保護との関係、情報の不確実性などから国際協力上の困難が存在するが、それにも関わらず協力体制が敷かれる条件について、監視体制の構築および医薬品(含むワクチン)開発の両面から検証を加えた。本年度はその前提となる(1)国際的な保健ガバナンスの形態の捕捉(2)資料収集(3)理論的研究の整理を行った。なお秋口よりイエール大学で在外研究を進めた。(1)につきヒアリング等を通じ実態把握に努めるなかで、国際保健分野における国際機関の役割について単なる相対的低下ではなく相補的な変容の中にあることを挙げ、特に規制基準設定の設定と政策課題のフレーミングにおける重要性を明らかにした。成果は在外研究先の研究会で発表し論文にまとめた。(2)につきNational Archivesを始めとする各在米図書館において特に第二次世界大戦下の各種ワクチン作成や冷戦下のポリオワクチン作成の米ソ連携に関する有用な資料を得た。また、WHO(世界保健機関)等関連国際機関の議事録や各種資料を分析し、インセンティブ構造を検証した。その際、ガバナンスの失敗および再活性化の視点からNeglected Diseaseを取り上げ、疾病別の国際機関・NGO・企業の関係性と相違を検討し示唆を得た。(3)につき、特に在外研究先でのセミナーを通じ本研究の基礎となる国際的なガバナンス構造についての理論枠組みをGlobal ConstitutionalismとGlobal Administrative Lawの対比の観点からまとめた。 以上の結果、特に制度形成の過程および運用の双方において専門家を通した「知識の連携」が条件となることが観察された。連携を可能とする条件につきいくつかの仮説を得、これを次年度以降検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
在外研究の目的であった基礎理論の把握と資料収集の双方について十分な進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度収集した情報およびそれに基づくいくつかの仮説について検証を加える。特に、本年度は理論枠組みおよび資料収集の両面で網羅性を重視したため、より詳細かつ具体的な事例別の検証を行う予定である。
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