研究課題
本年度は、昨年度より引き続き複合的なレジームによる国際的な感染症対策のガバナンスに関する分析を深めるとともに、それを基礎として知識を媒介とした国際的な政策移転メカニズム一般に関して横断的な分析を行い、一定の結論を得た。とりわけ多様な課題対処およびそれを目的とした政策移転について安全保障セクターの重要性が顕著に高まるとともに歴史的にその役割が変質していることを示し、その影響について議論した。これまでも安全保障の現代的変質については様々な形で論じられてきたが、セキュリタイゼーションを始め、多くの文脈において脅威そのものの変容やその認識の問題が中核となっており、行政実務の履行の場面における具体的な安全保障セクターの役割の変質について十分に包括的には扱われていない。政策履行場面におけるリスク分野とセュリティー分野の交錯の観点から(1)国際保健(特に感染症対策)分野(2)サイバー分野(3)宇宙分野の3分野に関するガバナンスの共通点及び相違点について考察し、各国内の組織統合やセクター間連携が国際的な政策移転プロセスおよび移転のパターンに影響を及ぼしていることを示した。本年度は文献研究や実務家を対象としたワシントンD.C.を中心とするインタビュー調査に加え、スイス・ジュネーブのWHO(世界保健機関)において2か月以上にわたる参与観察及び非公開資料を含むアーカイブ調査を行った。また、参与観察においてはエボラ出血熱対策における終結期であったこともあり、通常業務に加えグローバルヘルス・ガバナンスに関する多様なレビューや意見交換の現場から情報を得ることができ、研究全体の結論の導出に大きく貢献した。成果の一部はWHOで発表の機会を得るとともに(“Politicizing and De-Politicizing Global Public Health”)、論文にまとめた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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国家学会雑誌
巻: 129巻,1・2号 ページ: 201-204