研究課題/領域番号 |
13J09495
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
加賀谷 美佳 茨城大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 最高エネルギー宇宙線 / 多波長観察 |
研究概要 |
宇宙線の起源や粒子の加速メカニズムは、宇宙線の発見から100年以上経過した今でもなお、解明されていない宇宙物理学上の問題の一つである。本研究では、最高エネルギー宇宙線加速源候補天体の多波長観測を行い、最高エネルギー宇宙線加速源天体の統計的議論を行うことを目的としている。過去の研究から、最高エネルギー宇宙線加速源候補天体としては、銀河系外の活動銀河核が有力であると考えられている。我々はガンマ線未同定天体および活動銀河核に着目しているが、これらのガンマ線未同定天体も活動銀河核である可能性は高い。平成25年度においては、ガンマ線未同定天体の種族および距離を決定するための可視光分光観測として、10月に北天ではすばる望遠鏡、南天ではチリのVLT望遠鏡への観測提案を行った。また、海外のグループと協力し、数m級の望遠鏡を使っていくつかの候補天体の観測を行った。先にも述べたように、最高エネルギー宇宙線を加速する候補天体として系外の活動銀河核がある。そのため我々は、平成24年度すばる望遠鏡によって観測された最高エネルギー宇宙線加速源候補天体である活動銀河核の可視光分光解析を行った。この領域には、対応している可視光天体が2天体あり、どちらの天体がガンマ線源であるかどうかは不明であった。今回の解析により、候補天体の種族を決定することができ、候補天体を制限となる赤方偏移を求めた。1天体は近傍の恒星であり、もう1天体は遠方のクェーサーであることを明らかにした。赤方偏移が0.1を大きく上回る場合、天体から放射された最高エネルギー宇宙線は地球まで伝播することができないため、今回観測した天体は赤方偏移が1.5以上であったため、この天体は最高エネルギー宇宙線加速源候補から棄却するという結果に至った(2014年天文学会春季年会で発表、および論文準備中)。また、今回の観測および解析によって、可視光の解析手法を修得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外のグループと協力して数m級の望遠鏡を用いて最高エネルギー宇宙線加速源候補天体の可視光分光観測を実施したため。 また、活動銀河核の可視光分光解析によって、解析の手法などを修得することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、平成26年度も平成25年度に引き続き可視光分光観測による天体の種族の決定や赤方偏移の調査を行う。平成26年度は、大型可視光望遠鏡だけでなく、数mクラスの望遠鏡にも観測提案を行い、より数多くの天体の調査を実施する。一方、もし超高エネルギー宇宙線を加速する天体が明らかになったとしても、宇宙線の主成分である陽子があるかといった問題は解決できない。近年の研究結果から、電子起源と陽子起源で理論モデルに違いがみられることがわかった(Abdoetal. 2011)。特にサブMeV領域でのエネルギースペクトルの形状は電子起源であるか陽子起源かを判別するための確かな証拠となり得る。しかし、サブMeV領域については観測が難しいため、この領域での観測例はほとんどない。そこで、我々茨城大学高エネルギー宇宙物理グループで開発を行っている環境放射線測定用ガンマ線型コンプトンカメラを改良し、宇宙サブMeVガンマ線観測を行うことを検討している。これが実現すれば、これまでにない感度でサブMeV領域のガンマ線を観測することが可能になると期待される。 平成26年度は、宇宙ガンマ線観測用検出器の墓礎開発も行う。
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