研究課題
歩行中に障害物を跨ぐ際に生じる躓きは,転倒要因の中でも高い割合を占めている.歩行時に障害物を跨ぎ越す動作には,障害物の視覚認知が重要であることが知られているが,実際の跨ぎ越し中は障害物を目視しながら動作を行うことはほとんどなく,多くの場合は,事前に認知・記憶した障害物の位置および高さと幅に関する情報をもとに動作を実行している.近年,動物実験において,障害物回避動作(跨ぎ越し動作)に重要な認知機能の一つとして,身体情報に関わる作業記憶(身体性作業記憶)の存在が示唆された.本研究では,この身体性作業記憶に関わる神経機序の解明のため,ドーパミンニューロンに注目し,その機能的役割を明らかにする事を目的とする.前年度までに,動物モデルであるマウスを用いた身体性作業記憶能力を測定することが可能な新規の実験パラダイムを確立した.加えて,アルツハイマー病モデルマウスを用いて,疾病による記憶機能の低下が身体性作業記憶に影響を及ぼすことを明らかにした.本研究に用いたモデルマウスは,アルツハイマー病の症状の進行に伴い大脳皮質内のドーパミンの放出量が低下する事が報告されている.そこで本年度は,皮質へドーパミンを投射する主な神経核である腹側被蓋野の破壊を行った.その結果,障害物を跨ぎ越す際のマウスの後肢と障害物との接触数が増加する事を明らかにした.先行研究において,障害物回避歩行時の後肢の制御に身体性作業記憶が関与していることが報告されている.そのため,前頭皮質へ投射するドーパミンニューロンは身体性作業記憶に関与していると考えられる.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 4:7200 ページ: -
10.1038/srep07220
Neuropsychopharmacology
巻: - ページ: 1-10
10.1038/npp.2014.295