研究課題/領域番号 |
13J09498
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田久保 勇也 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | OCT / 波長可変レーザ / 光ファイバレーザ / 波長分散 / 断層撮影 |
研究概要 |
本年度は分散チューニングの原理を用いた波長可変ファイバレーザの定量的な評価、およびスペクトラルドメインOCTへの応用を行った。OCTは赤外線の干渉を用いたトモグラフィであり、その撮影原理の1つであるSS-OCTでは、高速かつ広帯域に波長掃引をすることができるレーザが必要である。当研究室で開発を行っている分散チューニング波長可変ファイバレーザは、共振器内に波長可変フィルタを含まないため、機械的な制限のない高速・広帯域な波長掃引が可能である。これまでに掃引速度250kHzという高速波長掃引時においてOCT画像の撮影に成功しているが、掃引時にレーザのスペクトル線幅が太くなることが問題となっており、OCT画像の到達深度は1㎜程度に制限されている。実用的な撮影システムとするためには、2mm以上の到達深度が必要である。これを達成するため、光源のどの部分に改良の余地があるかを調査した。分散チューニングにおいてはレーザ共振器内の光を強度変調し、その変調周波数を操作することで発振波長を制御している。実験の結果、この変調周波数を数GHzの高い周波数帯で動かした方が、細いスペクトル線幅が得られることがわかった。しかしこれは従来用いられてきた理論式とは逆の結果であり、今後は従来考慮されていなかった非線形光学効果等を考慮したシミュレーションを行う必要がある。 また、これまでこのレーザは上述のSS-OCTにのみ応用してきたが、波長掃引の際に加える変調波形を操作することでスペクトル制御が可能という性質を利用して、広帯域光源を用いるSD-OCTへの応用が可能である。本年度は掃引波形を変えることでスペクトル形状が適切に修正されることを確認した。また初めてSD-OCTへの応用を行い、指のOCT画像の撮影に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書においては分散チューニングレーザを実用可能レベルに引き上げることを目標としている。本年度に行った光源の評価は、今後の光源の改善に直接結び付くと考えられる。また、SD-OCTへの応用は申請書に記述されていない事柄であるが、今後の分散チューニングレーザの発展において、非常に意義深いことである。
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今後の研究の推進方策 |
まず光源の評価については、従来の理論式と実験値の違いをきちんと評価し、シミュレーションも交えて考察する。この結果については体系的に整理し、外部への発表を行う。また計画に組み込まれていなかったSD-OCT応用についても、更なる適切な掃引波形の算出等を行い、SS-OCT応用との二本柱の形で分散チューニングの研究を進めていく。光源の仕様を変えた場合に、OCTシステムとの整合性が取れなくなる可能性があるが、この点については製造会社であるSantec社との協力のもと、改良を行っていく。
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