研究課題/領域番号 |
13J09498
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田久保 勇也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | OCT / 光ファイバレーザ / 波長可変 |
研究実績の概要 |
本研究では分散チューニングと呼ばれる原理を用いた波長可変光ファイバレーザの、OCT応用に向けた開発を行っている。OCTは赤外線を用いた断層イメージング技術であり、高分解能のリアルタイム撮影が可能である。現在主流となっているOCT技術であるSS-OCTにおいては波長掃引レーザが必要となるが、このレーザの掃引帯域が広いほど分解能が向上し、掃引速度が速いほど画像取得時間が短くなり、細い瞬時線幅で掃引出来るほどイメージング深度が向上する。したがって、高速・広帯域に、細い線幅で掃引出来るレーザが必要となる。 分散チューニングは機械的な波長選択フィルタを用いる必要のない波長可変レーザであり、高速・広帯域な波長掃引が可能である。しかしこれまでに構成したレーザにおいては、高速掃引時に瞬時線幅が広がってしまい、OCTのイメージング深度が低下してしまうという欠点があった。過去に研究室で行われたシミュレーションにより、この問題は分散チューニングレーザを発振させるために必要な強度変調の周波数を上げることで解決可能であることがわかっている。しかし、変調周波数を上げると掃引可能な帯域が狭まってしまうという問題が生じる。この問題を解決するために、従来の正弦波による変調ではなく、パルス変調による分散チューニングを行った。これにより掃引帯域を保ったまま実効的な変調周波数を上げることができ、瞬時線幅の改善が実現した。 また分散チューニングレーザは波長掃引レーザであるが、掃引時の光を検出し続ければ広帯域光源として使用することができる。この際に掃引波形を操作することによって、スペクトル形状を平坦化させることもできる。本年度においてはスペクトル制御の精度を上げるため、線形掃引時に得られたスペクトルを積分し、それを掃引波形にフィードバックすることによってスペクトルの平坦化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分散チューニングをOCT応用する上で最大の問題となっていたのが掃引時の線幅であるが、パルス変調による分散チューニングが実現したことにより大幅な改善が実現した。実際にSS-OCT応用時においてもイメージング深度の向上が確認された。 また分散チューニングレーザの広帯域光源としての利用は、高分解能なOCT手法であるSD-OCT応用に適している。実際に分散チューニングレーザのSD-OCT光源としての評価も行っており、OCT分野に多方面から貢献できることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行ったパルス変調による分散チューニングと分散チューニングレーザの広帯域光源としての利用は、シミュレーションを通して定量的な評価を行い、更なる精度の向上を目指す。また光源の改善だけでなく、分散チューニングレーザに最適な信号処理方法を検討し、OCTシステムに搭載することを目指す。光源・システム双方の最適化を行った後は、医学部の協力のもと生体サンプルの撮影による評価を行う。
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