今年度は概ね年次計画の通りに研究を実施することが出来た。まず一つ目の成果として、星形成に関する新たなフィードバック機構を導入した新たな宇宙論的銀河形成モデルの構築を行い、その研究結果を論文としてまとめた。この論文は既に Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 誌に受理されており、来年度早々に出版される予定である。来年度以降はこの研究成果について国内外の研究会などで講演を行い、研究成果を広くアピールするとともにより洗練されたモデルの構築を行う予定である。 上記の研究と並行して、私の持つ宇宙論的銀河形成モデルを赤外線・サブミリ波領域にまで拡張する研究を行い、このモデルを用いて、新世代のサブミリ波望遠鏡であるALMAに対する理論予測を行った。特に、ALMAへの観測プロポーザル作成の際には私のモデルを他の研究者へ広く提供し、結果として多数の観測プロポーザルに共同提案者として参加させて頂いた。来年度以降はそれらの観測から得られたデータを用いて、よりモデルを現実的かつ有用なものにしていく予定である。また、ALMAの初期観測で既に得られているデータと私のモデルとの比較も多数行い、これまで殆ど理解が進んでいなかった、ダストに隠された宇宙の星形成史について、ある程度の理解を得られつつある。この研究については来年度中の出版を目指して、論文の執筆を開始したところである。 以上述べたように、今年度は事前に立てた年次計画を概ね実現することができた。またそれだけでなく、受入研究機関やその近隣の国立天文台でのセミナー等に多数参加し、他の研究者と議論させて頂くことで、これまでにない新たな研究のアイディアも数多く得られ、それによって研究テーマを大きく広げることが出来た。
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