研究課題
金属絶縁体転移は古くから固体物理学の中心的課題であり続けている。特に、電子間の斥力相互作用によるモット転移近傍においては、電荷自由度の局在化だけでなくスピンや軌道自由度も絡んだ多彩な秩序相が現れ、3d電子系を中心に研究が活発に進められてきた。一方、近年のトポロジカル絶縁体発見以来、相対論的スピン軌道相互作用に注目が集まっている。スピンと軌道自由度が相互作用することにより電子バンド構造が再構築され、しばしばトポロジカル絶縁体やディラック半金属などのトポロジカルに非自明な電子状態を実現する。重い元素を含む5d電子系酸化物においては、この相対論的効果と電子間相互作用の競合が非従来的な電子・磁気基底状態を発現させる可能性が議論され、理論と実験の双方から現在盛んに研究されている。本研究では、5d電子系酸化物の一つであるパイロクロア型イリジウム酸化物を対象として、金属絶縁体転移の起源の解明、新奇電子・磁気相の探索を目的として研究を行った。外部圧力や化学置換、外部磁場により実効的な電子相関や磁気構造を精密に制御することで、常磁性金属や常磁性絶縁体、反強磁性絶縁体、強磁性半金属などの多岐にわたる相が現れることを明らかにした。電荷輸送測定と光学測定を組み合わせることで、それぞれの相における電子バンド構造に関する知見を得るとともに、金属絶縁体転移の起源や性質について多角的な議論を行なった。さらに、反強磁性絶縁体相において、磁気的界面に高い伝導性を持つ異常な金属状態が存在することを見出した。最先端の顕微法により金属的磁壁の直接観測に成功し、輸送特性と電荷ダイナミクスから金属的磁壁の性質を明らかにした。以上の結果から、パイロクロア型イリジウム酸化物においては磁性と電子状態が密接に関係しており、電子相関や外部磁場によって多彩な電子、磁気相が現れることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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