研究課題/領域番号 |
13J09610
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 久美子 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アルドール反応 / 不斉反応 / ポリオール |
研究実績の概要 |
アルドール反応は炭素-炭素結合形成を伴い、キラルビルディングブロックとして価値の高いβ-ヒドロキシカルボニル化合物を与えるため、その発見から現在に至るまで140年以上に渡り研究されてきた。しかし、既存の手法を複雑分子合成に適用しようとすると、官能基の保護・脱保護や酸化還元操作が必須であり、天然物など複雑な分子骨格を立体選択的に構築できる最も基本的かつ効果的な方法でありながら、アルドール反応の持つ潜在力は未だ最大限発揮されているとは言えない。そこで私は、次世代アルドール反応を「高度に修飾されたポリオール、究極的には高分子の高立体選択的、超効率的合成」であると考え、保護基フリー触媒的多連続不斉アルドール反応の開発に取り組んでいる。 具体的には、(1)ハイブリッド型新規含ホウ素触媒の開発、(2)無保護糖に対する金属エノラートの付加、の二つによる連続的アルドール反応の達成を目指している。(1)では、これまでルイス酸として用いられることの多かったホウ素を、ルイス酸性のみならず、そのエステル交換能を期待して触媒に組み込み、有機触媒の機能性と金属触媒特有の反応性とを併せ持つ新規ハイブリット型触媒の創製による触媒的多連続不斉アルドール反応の達成を目指してきた。実際、ボロン酸(エステル)やボリン酸(エステル)により望みのエステル交換が進行したが、現段階ではホウ素のルイス酸性を生かした基質の活性化には至っていない。(2)では、容易に入手可能なキラル源である無保護糖を用い、不斉触媒制御による高い立体選択性の獲得を目指している。既に達成した、ロジウム触媒によるアリルアルコールの異性化を起点とするアルドール反応を用いて種々検討したが、いずれも副反応が優先的に進行してしまい、この反応系をそのまま無保護糖を用いたマルチアルドール反応に適用するのは困難であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、ハイブリッド型新規含ホウ素触媒によるβ-ヒドロキシアルデヒドの活性化と続くアルドール反応が、想定外の安定中間体生成のため困難であることを明らかにした。現在は研究課題実現のため、非常に高い反応性を有するアルデヒド由来のエノラートを選択的に発生させることで目的の多連続不斉アルドール反応実現を試みている。現段階で比較的良好な結果を得ており、今後の検討により研究課題実現に進展があると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
保護基フリー触媒的多連続不斉アルドール反応による次世代ポリオール合成達成のためには、新たな反応系が必要であることが分かった。これまでは、求電子剤となる基質の活性化に主眼を置いてきたが、今後は、非常に高い反応性を有する求核剤を選択的に発生させることで目的の多連続不斉アルドール反応を実現したいと考えている。
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