本研究課題は時事刻々変動する地震発生パターンの変動をとらえるための統計モデルの構築及び、それを用いた地震活動の確率予測の精度向上を目的としている。特にここでは、活動が大きくばらつく大きな地震後の余震活動に焦点を当て、より迅速にモデルを推定し、精度の高い予測を行うための手法の構築を行ってきた。特に昨年度までに、統計的な手法の開発及びその有効性の実データを用いた検証を行ってきたが、今年度では、それらの手法の拡張及び、より実際的な状況での手法の有効性の検証を行った。 通常の地震活動の研究では、専門家によって決められた地震発生データが用いられている。これらのデータは質が高い一方で、人の手によって決められているので編集に長い時間を要するという問題がある。実際に余震活動の予測を行う際には、そのリアルタイムに利用可能である、コンピュータによって自動決定された地震発生データを用いる必要があるが、そのような自動処理されたデータは一般には人の手によって決められたデータに比べると一般的には質が低い。例えば自動処理されたデータは欠損があったり、決定誤差が大きいといった問題が存在する。しかしながら、これまでそのようなリアルタイムデータに基づいた予測の性能は、その実用的な重要性にかかわらず、明らかになっていない。そこで今年度は、防災科学技術研究所、統計数理研究所、筑波大学と共同で防災科学技術研究所のHi-netによってリアルタイムに自動決定された地震発生データを用いて、より現実的な状況下での我々の手法の予測性能の評価を行った。その結果、特にマグニチュードが大きな余震の予測の際には、人の手によって決められた質の高い気象庁のデータベースを用いたときとほぼ同様の予測性能があることを明らかにした。この研究成果は現在論文誌に投稿中である。
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