研究課題/領域番号 |
13J09663
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
吉村 謙一 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 光合成 / 樹木成長 / 降雨間隔 / 乾燥ストレス |
研究概要 |
落葉・常緑広葉樹混交林の山城試験地における優占樹種である落葉樹コナラと常緑樹ソヨゴにおいて、1年間通して光合成速度および樹液流速を連続測定した。年間通して葉をつけるソヨゴは冬及び夏に光合成速度が低下した。ソヨゴの光合成最適温度域はコナラよりも低く、温暖な気候ではソヨゴの光合成生産量はコナラに比べると相対的に低くなることが分かった。両樹種ともに晴天日が継続すると樹液流速および光合成速度は徐々に低下し、降雨後に回復する傾向がみられた。その傾向はソヨゴにおいて顕著であり、高温と乾燥に対して脆弱であることが示唆された。潜在自然植生が常緑樹林帯である気候帯に属するにもかかわらず、同試験地においては常緑樹に比べて落葉樹の生長趾が大きいことが毎木調査の結果からわかっている。ソヨゴでみられた夏の光合成低下は常緑樹の低い生長量を説明するひとつの要因となりうる。また、日本本土より強い乾燥がみられる小笠原諸島父島において、乾燥により矮性化した樹木を用いて土壌乾燥過程にともなう樹木の生理機能の変化を測定した。その結果、降雨後の上壌乾燥により水ポテンシャルを低下させる樹種と低下させない樹種の両者がみられ、降雨間隔が広がると水ポテンシャルを低下させる樹種において乾燥ストレスが強くかかることがわかった。ところが、同等の降雨間隔であっても夏季の乾燥ではこのような傾向がみられたが、冬季の乾燥では水ポテンシャルに樹種差がみられなかったことから、父島に生育する樹木において乾燥ストレスは夏季に限られていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
両試験地において、当初の予定通りに機材を設置し、測定に成功している。父島において天候上の理由により、当初想定されたほどの乾燥がみられなかったが、湿潤年と乾燥年における樹木生理機能の変動をみる研究であるため、この点について支障は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
山城試験地において、光合成とともに幹・枝呼吸速度を同時連続測定する。前年度は現優占樹種であるコナラとソヨゴにおいて測定したが、今年度は照葉樹林の代表樹種のひとつであるアラカシにおいても測定を開始し、常緑落葉混交林から照葉樹林に遷移が起こるプロセスを樹木光合成および呼吸から明らかにする。
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