京都府南部に位置する山城試験地において現優占樹種である落葉樹コナラおよび常緑樹ソヨゴに加えて次期優占するであろう常緑樹アラカシの成木において葉群光合成速度、幹呼吸速度、樹液流速度、幹肥大生長を連続的に観測した。葉群光合成速度は主に光環境の影響を受けるが、高温および低温下では低下するといった温度の影響も受けていた。光合成の温度依存性は単純に瞬間瞬間の温度に依存するのではなく、強い温度ストレス後に低下してその後も低下したままという履歴効果をもつことが明らかになった。幹呼吸については、基本的には温度に対して指数関数的に反応するが、その温度依存性には季節性がみられた。幹呼吸速度には日によって大きなバラつきがみられるため、幹呼吸速度の変動のうち、温度や季節性で説明できない成分を抽出しその変動を調べた。その変動は光合成速度の変動から2、3日遅れるように追従したパターンを示していた。この結果、幹呼吸速度は基本的に温度や肥大生長・展葉といった生物季節的なイベントで説明できるが、光合成産物が多くとり込まれた後に上昇し、光合成産物の取り込みが少ないときに低下するといった、光合成産物の流れにも依存していることが明らかになった。このように、同一樹木内で光合成と呼吸は独立しているわけでなく、連動していることが明らかになり、本研究の結果からは光合成・呼吸の差分である樹木成長の変動は緩和されることが予想される。
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