研究概要 |
機械システムで利用される液体に混入した気泡は, 機器の性能低下, 機器部材の劣化や故障の原因となる. これらの問題を解決するには旋回流を利用して液中から気泡を分離除去する気泡除去装置の利用が有用である. 従来の研究で, この気泡除去装置は液中の気泡を効率よく分離除去することが確認されているが, 気泡除去装置の形状パラメータの選定法は確立されていない. 本研究では, 気泡除去装置の形状パラメータを最適化し, 装置の性能を向上させることを目的としている. なお, 気泡除去装置の性能向上には, 液中に混入した気泡を精確に測定することが必要であり, 本研究では気泡除去装置の性能向上と共に気泡の除去性能を定量的に評価する方法を検討している. 平成25年度は, 油圧システムの作動油中の気泡除去を目的として実験や数値解析を実施した. 気泡除去装置の性能評価実験の結果から, 気泡の混入した油の質量と体積を同時に測定することで混入気泡量の測定が可能であること, 気泡が混入した油の体積弾性係数を測定することで気泡除去装置の性能を定量的に評価できることを明らかにした. また, 気泡除去装置の流れの可視化実験と数値解析の結果を詳細に分析し, スパイラル係数という新たな指標を用いた気泡除去装置の流出口径と放気口径の選定法を提案した. 流体の質量と体積の測定による気泡混入量の測定では, 回路内を通過する流体中の気泡混入量をリアルタイムで測定することが可能であり, 非定常な流れであっても装置の性能評価が可能である. 体積弾性係数の測定による気泡除去装置の性能評価では, 気泡がシステムの動特性に与える影響を容易に評価することが可能であり, さらに他のシステムへの適用が容易である. 気泡除去装置の流出口径と放気口径の選定に用いたスパイラル係数は, 複数のパラメータを考慮した指標であり, 様々な条件を考慮して形状パラメータを選定する上で非常に有用な指標である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の研究では, 限られた条件下で装置の形状パラメータの最適化を行っていたが, スパイラル係数という指標を導入したことにより, 様々な条件を考慮して装置の形状パラメータの選定が可能になったためである. また, 液中の気泡量測定方法と気泡がシステムの性能におよぼす影響を実験的に検討し, 気泡除去装置の性能を定量的に評価することが可能になったためである。
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