研究課題/領域番号 |
13J09743
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 智哉 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC1)
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キーワード | 電気極子モーメント / EDM / CPの破れ / スピンメーザー / 光ポンピング / 磁力計 |
研究概要 |
本研究では、宇宙の物質・反物質非対称性の起源解明へ向け、^<129>Xe原子の電気双極子能率(EDM)の測定を目指す。 平成25年度は、EDM測定に必要なスピン歳差周波数精密測定を行う際に問題となる磁場変動の影響を取り除くために、^<129>Xeと同時に^3Heの歳差周波数を測定する^3He共存磁力計の開発を行った。^3He共存磁力計では、^<129>Xe及び^3Heのスピン生成に用いる偏極Rbとの接触相互作用によるスピン歳差運動周波数の変動が主要な課題となることが分かった。このためスピン生成部とメーザー発振部を分離しチューブで接続するダブセル形状セルを新たに導入した。メーザー発振部へ到達する^<129>Xe偏極度について調査するため、チューブ長の異なる多数のセルを製作し性能比較を行なった。また、^3Heの到達偏極度が^<129>Xeガス圧に依存する事が分かったため、セルに封入する^<129>Xeガス圧を変化させ、^3He到達偏極度を測定した。これらの測定に基づき、測定に最も適したセル形状、ガス圧を決定した。さらに、メーザー発振部でのRb縦偏極を積極的に破壊する直線偏光レーザーを導入し、その状態においても信号が検出可能であることを自由誘導減衰測定により確認した。これらの開発を統合しメーザー発振を行い、ダブルセル形状で初めて^<129>Xeと^3Heの同時メーザー発振に成功した。現在、^3He共存磁力計実証のため、メーザー周波数相関について解析中である。 また、EDM測定に入るために必須のレーザー光を透過させる透明電極の開発を行った。酸化インジウムスズ(ITO)透明電極を材料に採用し、セルを作成して測定を行って、^3Heの到達偏極度が減少する事及びITO透明電極が高温(~100℃)に脆弱である事を明らかにした。この結果に基づき、より低温での測定(~70,80℃)及びメッシュ状のモリブデン金属電極の採用の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
^3He共存磁力計の基礎技術開発を行い、ダブルセルにおける^3He/^<129>Xe同時スピンメーザーの発振に成功して、その有効性検証の段階に到達した。また、EDM電場印加セルについては、ITO透明電極導入時の^3He減偏極及び温度条件を定量的に解明し、EDM測定に向けて取り組むべき課題を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初は、RbNMOR磁力計と^3He共存磁力計の同時運用を考慮したが、現段階においては、測定対象と同一セルで磁場測定を行う^3He共存磁力計がより高い測定精度を得られることが明らかとなってきたため、^3He共存磁力計の開発に注力することとする。^3He共存磁力計については、同時メーザー発振条件の最適化及びメーザー周波数解析を継続して、性能の見極めを進めていく 。EDM測定セルでは、電極材料等の選定・決定を行い、実際の測定セットアップを完成させる。その後、EDM測定を実行し、解析を行って研究結果をまとめる予定である。
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