研究課題
本研究は、129Xe原子の永久電気双極子能率(EDM)の測定を通し、宇宙の物質・反物質非対称性の起源を解明することを目的とする。本研究では、EDM測定精度を制限しているメーザー運転環境の長期変動の影響を低減するため、測定対象である129Xeと3Heを同じセルに封入し、同時にメーザー発振を行って参照系とする「3He共存磁力計」、メーザー核種と偏極Rb間の接触による周波数シフトを打ち消すためにセルを偏極生成部と測定部に分割する「ダブルセル構造」を採用している。本年度は、電極付きダブルセル型EDMセルを用いて129Xe/3Heの同時メーザー発振を行い、メーザー周波数長期変動の要因とその定量的評価を行った。まず、メーザー周波数に影響を与えるセル温度、レーザー強度等の運転パラメータの長期安定度を評価した。安定化したセル温度及びレーザー強度について1万秒間の積算により二乗平均平方根(RMS)誤差としてそれぞれ0.0065±0.0013 ℃、1.7×10^-2 %の安定度を得た。レーザー周波数、静磁場電流についても同様に評価した。次に、運転パラメータを能動的に変化させ、メーザー周波数のパラメータへの依存性を評価した。ここで、偏極Rbシフトの更なる低減を狙い、セル測定部に導入しているRb偏極度操作レーザー光の円偏光の向きをポッケルスセルによって高速(~100Hz)に切り替える機構を新たに採用した。これにより、メーザー周波数の測定部温度への依存性を完全に打ち消すことに成功した。これらの開発・測定により、運転パラメータの長期変動に起因するメーザー周波数RMS誤差の二乗和平方根は1万秒の積算でμHzオーダーとなることが明らかとなり、現実的な10 kV/cmの電場印加を仮定すれば、複数回測定により現状の129Xe原子EDM世界最高精度に到達可能であることを示した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Hyperfine Interactions
巻: 236 ページ: 59-64
10.1007/s10751-015-1203-3