研究概要 |
制約充足問題において, 扱える制約集合を制限した際の計算量が多項式時間可解かもしくはNP完全であるという予想を解決することは理論的に非常に重要な課題である. 本研究では, 制約充足問題に対して, 数理計画法を用いることでこの予想を解明することを目指す. 2013年度には制約充足問題の部分問題クラスである充足可能性問題に対する既存研究のアルゴリズムを制約充足問題へと拡張した. これにより, 制約充足問題の幅広い部分問題クラスに対する多項式時間可解性を示すことが出来る. 具体的には, 充足可能性問題に対して提案されたオーターク割当てとその線形版に着目した. 線形オーターク割当ては数理計画問題の一種である線形計画問題を通じて多項式時間で求めることのできるオータ一ク割当てである. 本研究では, 線形オーターク割当てに対する新たな解釈を与えることにより, 制約充足問題への拡張を行った. さらに, 人工知能の分野で提案された固定可能割当てに着目し, その線形版を定義し, 解析を行った. その応用として, 整数線形不等式系の実行可能性判定を考え, 局所線形固定可能割当てを擬多項式時間で求めるアルゴリズムを開発した. このアルゴリズムはこれまでに擬多項式時間可解であることが知られているホーン不等式系や二次不等式系に対する結果を真に包含している. また上記の結果を国内学会オペレーションズ・リサーチ学会春季研究発表会よび電子情報通信学会総合大会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究では, 当初の計画通り, 線形オーターク割当てを拡張することに成功した. また, それに加え, 極大性の解析をするなど、内容を深く掘り下げた. 別方向のアプローチであるグラフ彩色問題に対する計算量の指標は構成中であるが, 総合的にはおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
線形固定可能割当ての制約充足問題に対する適用について, さらに調査を進める. これにより, 新たな多項式時間可解部分クラスを見出していく. このことは、より詳細に線形オーターク割当てを解析することと同時進行で行う. また, グラフ彩色問題に対する指標の構成を継続して行う. このために, グラフ理論の書籍を購入するなどし, 適宜知識を補充する予定である.
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