研究課題/領域番号 |
13J09798
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 隆志 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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キーワード | スピン軌道相互作用 / 界面物性 / トポロジカル絶縁体 / 半導体 / 平坦分散 |
研究実績の概要 |
本研究員は平成25年度においてスピン軌道相互作用に起因したトポロジカルな現象に関する研究に従事した。以下ではその研究の主な内容2つについて述べる。 (甲)界面半金属状態のトポロジカルな特徴付け 本研究員は、物質を接合した場合の界面金属状態を見出し、この金属状態は、Hamiltonianの情報を含んだ行列のPfaffian演算による特徴づけを予言していた。本年度において、数値計算を実行しいくつかの模型において絶縁体接合における界面金属状態の発現を見出した。本研究は、2つの絶縁体を接合し、金属状態が現れるという直感的に分かりやすく、工学的応用への発展が期待される。 (乙)ダイアモンド格子における表面完全平坦分散 本研究員は、ダイアモンド格子模型において、軌道の重なり積分に異方性に由来する表面完全平坦分散を予言していた。これは、グラフェンの端状態において現れる平坦分散の3次元版となっており、これを見出したのは本研究員が初めてである。一般的に、平坦分散は強磁性を誘起すると考えられているため、研究(乙)においてその可能性を模索した。また、それがトポロジカルな性質に由来すると考えられ、当初の研究課題「磁性絶縁体におけるトポロジカルな状態の研究」への発展が期待される。また、本研究はダイアモンド格子模型における表面完全平坦分散の証明をもって25年度出版された(R. Takahashi, S. Murakami, Phys. Rev. B 88, 235303(2013))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したいた平成25年度の研究の主な研究内容は「界面半金属状態のトポロジカルな特徴付け」であった。本研究員は本年度において、いくつかの絶縁体模型において、界面金属状態が発現することを見出しており、これらから絶縁体の対が界面において金属状態を表す傾向をつかんでいる。よって26年度においてこれを一般化する法則を見出すのみである。 また、上記研究に加え、ダイアモンド格子模型において現れる平坦分散の研究を完成させ出版した。本研究員は以前にダイアモンド格子における平坦分散の研究を行っていたが、本年度に、平坦分散を持つ電子状態の研究を加え、論文として出版することがでた。本研究は当初の研究計画「磁性絶縁体におけるトポロジカルな状態の研究」の足がかりとなることも予見される。以上をもって、平成25年度に行った研究は、おおむね順調な成果が得られたといえ、26年度の研究計画への足がかりとして順調な結果をえている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、スピン軌道相互作用によって発現する特異な界面状態について研究を行う。25年度に行われた界面金属状態はFermiループというFermi面が環状を示す特異な状態が科確認されている。本研究員は25年度において、2つの絶縁体を接合した場合に生じる界面金属状態が発現する傾向をつかんでいる。こういった傾向は、接合した系全体のHamiltonianの情報を含む行列の反対称性からきていることがすでに分かっているが、その傾向と金属状態の発現との因果関係はいまだ不十分であり、明確な基準を示す必要が迫られている。この基準は、対称性に基づくトポロジカルな特徴付けによってもたらされると考えられ、この特徴づけを一般の絶縁体接合系に適応できる一般理論の構築を行う。このような特徴づけに関する研究は、量子ホール効果などが類似した研究であり、Chern数などのトポロジカル不変量を用いた計算を参考にする予定であり、最終的には絶縁体として新たな類別を組み込むことを目指す。更に、この状態を実験的に再現すための方法を理論的な面から模索する。
また、上記研究からの派生として、Berry局率の測定方法の理論的提案を行う。これはトポロジカルな電子状態とスピン軌道相互作用にまつわる研究であり、本研究の主題である「スピン軌道相互作用による界面トポロジカル状態の理論研究」と大いに密接がある内容となっている。これは、Berry局率と波数分解測定可能な物理量を対応させることに相当する。具体的には角度分解光電子分光を用いることによって、Berry局率が測定できることを見出す。
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