研究課題
一次繊毛は多彩な機能を有し、骨構成細胞において細胞外のシグナルを受容するケモセンサー(化学刺激受容器)やメカノセンサー(機械刺激受容器)として機能することが示唆されるが、その詳細なメカニズムは明らかになっていない。我々は、一次繊毛の機能に関わるBBS3に着目し、BBS3欠損下におけるマウスの骨表現の解析を進めている。Bbs3ノックアウトマウスはメンデルの法則に従って出生するが、生後2-3時間以内にチアノーゼを呈して死亡した。Bbs3ノックアウトマウスの心臓において中隔欠損が観察されたことから、Bbs3ノックアウトマウスの死因は先天性心疾患によるものと考えられる。胎生期18.5マウスの頭部骨格をμCTを用いて解析したところ、Bbs3ノックアウトマウスの頭蓋底正中部では蝶形骨の低形成や上顎骨の異形成が観察された。一方、後頭骨の形態や石灰化に異常は認められなかった。アリザリンレッドおよびアルシアンブルーを用いた骨格標本から、Bbs3ノックアウトマウスの頭蓋底では、蝶形骨間軟骨結合および蝶形骨・後頭骨間軟骨結合が正中部において融合していないことがわかった。また、歯胚の欠損や口蓋裂、胸骨の非対称性融合が高い浸透率で観察された。一方、下顎骨、頭蓋骨、四肢長管骨における骨格形成異常は観察されなかった。組織学的解析から、頭蓋底形成の鋳型となる左右一対の梁軟骨は形成される一方、その正中部は融合せず、繊維芽細胞を含む結合組織で充たされていた。以上の結果から、頭蓋顔面領域の発生過程において、Bbs3は頭蓋底正中部の形成に重要な役割を担うことが明らかにされた。今後、なぜBbs3非存在下では梁軟骨の正中部における融合が進まないか検討をしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画では、骨代謝におけるBBS3の役割を検討する予定であったが、マウスの遺伝的バックグランウンドをC57BL/6へ統一したことにより、Bbs3ノックアウトマウスが新生児致死を示したことから、当初の予定通りに実験を進めることができなかった。しかしながら、Bbs3ノックアウトマウスの死因を探求するプロセスにおいて、頭蓋顔面領域の骨格形成異常や先天性心疾患、胸骨の非対称性融合など、注目すべき表現形を見いだすことができたことから、研究が大きく進展した。現在は研究の方向性が定まり、おおむね順調に進展していると判断できる。
今後は、胎生期10.5-14.5における梁軟骨発生および正中部での融合に着目し、組織学的手法により解析を行う。またwhole mount embyroを用いたin situ hybridizationにより、Bbs3ノックアウトマウスの頭蓋底においてどのような遺伝子の発現パターンが変化しているか検証する。in vitroの実験系では、培養軟骨細胞ATDC5細胞においてsiRNAによりBbs3をノックダウンし、細胞の遊走能やソニックヘッジホッグに対する走化性について検証する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
Journal of Cellular Physiology
巻: - ページ: -
10.1002/jcp.25005.
Journal of Cellular Biochemistry
巻: 116 ページ: 1144-52
10.1002/jcb.25071.
巻: 116 ページ: 142-148
10.1002/jcb.24953.
巻: 229 ページ: 1353-1358