研究課題/領域番号 |
13J09837
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷口 貴昭 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | tRNA / RNA修飾 / アセチル化 / 修飾酵素 / 酢酸イオン |
研究概要 |
これまでに大腸菌ではtRNA^eMelのアンチコドン一文字目(wobble位)にN^1-アセチルシチジン(ac^4C)を呼ばれる修飾塩基が存在し、修飾酵素TmcAによってアセチルCoAを基質として触媒されている事が報告されている。しかしながら、マイコプラズマ種や枯草菌においてはac^4C修飾の存在は報告されていなかった。報告者はこれまでに枯草菌やMycoplasma mobileにおいてもac^4C修飾がtRNA^<eMet>のwobble位に存在するが、TmcAのホモログは存在しないことを発見していた。そこで、この新規ac^4C修飾酵素を同定する事とした。比較ゲノムを用いて候補遺伝子を絞り込み、枯草菌の候補遺伝子破壊株より単離したtRNA^<eMet>を解析する事で新規ac^4C修飾酵素の同定に成功した。 同定した新規ac^4C修飾酵素は既知のアセチルトランスフェラーゼドメインを持っていなかった。そこで、大腸菌を用いて枯草菌新規ac^4C修飾酵素の組み換えタンパクを取得し、in vitro修飾再構成反応を行うこと反応機構の解析を行った。その結果、新規ac^4C修飾酵素は、酢酸イオンとATPを基質として、tRNA^<eMet>のwobble位にアセチル化を導入していることが判明した。また、「ac^4C修飾によってIleRSによるミスアシル化が防止されており、AUA/AUGコドンの読み分けに寄与している」という仮説の証明を研究目的にしていた。そのためac^4C修飾によりI1eRSによるミスアシル化の頻度が変わるかを調べたが、特に変化は見られなかった。当該年度の研究成果は、当初の研究目的からはずれる部分はあるが、酢酸イオンを直接の基質としてRNAのアセチル化を行う初めての酵素の発見であり、アセチル化の基質はアセチルCoAであるというこれまでの概念を改めさせられる意義深いものであると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究により、新規ac^4C修飾酵素の同定に成功した。また、同定した酵素は酢酸イオンとATPを基質としてRNAアセチル化を行う初めての酵素であった。この成果は、当初の研究目的の方向性とは異なるが、今後さらなる研究の展開が可能になったためおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、tRNA変異体を作製し、数多くあるtRNAの中からどのようにtRNA^<eMet>を識別しているかを解明するとともに、酵素変異体を作製し、反応を担う残基の特定を行っていきたい。また、ac^4C修飾欠損株における表現型を探索し、ac^4C修飾の持つ生理学的意義の解明を目指して取り組んでいきたいと考えている。そして、研究成果として国際学会にて発表、学術論文に投稿していく予定である。
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