研究概要 |
本研究は、繊毛虫ブレファリズマにおいて、交配フェロモンが種分化にどのように関わったかを明らかにすることを目的としている。ブレファリズマは、飢餓状態になると、I型が分泌する交配フェロモンgamone1とII型が分泌する交配フェロモンgamone2が分泌され、相補的な接合型に作用することで接合を開始する。はじめに、野外株の収集を行い、新たに6種、12株を獲得した。そのうち、4種は相補的な接合型が両方揃った。これらの新しい株も含めて、交配フェロモンの働きについて調べた。gamone2は異なる種に対しても作用することが示唆された。一方、gamone1の働きには特異性が見られた。ブレファリズマ属は特徴的な大核の形態をもとに4つのグループ(I, II, III, IV)に分けられるが、gamone1は少なくとも大核のグループ特異的に働くことから、gamone1が異なる大核のグループに属する異種間の接合を防ぐバリアとして働いていることが示唆された。また、gamone1遺伝子の解析結果から、gamone1の相同性の高さと接合誘導能の間には相関が見られた。Blepharismaにおける交配フェロモンのアミノ酸配列の相同性の高さと機能に関連があることは、本研究により初めて明らかとなった。さらに、交配フェロモンが作用し接着能を獲得した細胞どうしが、大核のグループに関係なく異種とも接着するかどうかを調べた。その結果、大核のグループIIとIII、IIとIVのあいだでは接着が起こらないことから、細胞どうしの接着の段階で、異種間接合を防ぐバリアが働いていることが示唆された。したがって、ブレファリズマには少なくとも2つの異種間接合を防ぐバリアが存在することが示唆された。
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