研究概要 |
平成25年度では, 酵素を用いない高感度FISH法であるin situ hybridization chain reaction (HCR)法を改良したin situdual HCR法の開発を目指し, プローブの設計及び本手法のプロトコルの最適化を行った. また. 本手法の蛍光強度を算出し, 本手法を用いてmRNAが視覚的に検出できるのか確認を行った. さらに, 標的微生物を選定するために, トルエンガスを除去しているdown-flow hanging sponge (DHS)リアクター内の微生物群集構造解析を行った. 1. プロープの設計及びプロトコルの最適化 現在のin situ HCR法の蛍光強度ではmRNAを視覚的に検出するには不十分であると考え, HCRが菌体内の2回行えるプローブを設計した. 洗浄方法等のプロトコルを最適化することで, スライド上から得られた非特異的な蛍光が抑制された. 2. In situ dual HCR法の蛍光強度 プロトコルを最適化したin situ dual HCR法の蛍光強度を算出した結果, 従来のin situ HCR法の蛍光強度と比較して約2倍程度高かった. この結果から, 従来の高感度FlSH法であるCARD-FISH法と同程度の蛍光強度を有していると考えられる. 従って, 開発したin situ dual HCR法は, 酵素を用いることなくmRNAを視覚的に検出できるポテンシャルを有していると考えられた. 3. トルエンガスを除去しているDHSリアクター内の微生物群集構造解析 トルエン分解能を有している微生物は, 機能と系統が一致していない場合が多い. そこで, トルエンを処理しているDHSリアクター内のトルエン分解菌を把握するために16SrRNA遺伝子及びトルエン分解に関与する機能遺伝子を標的とした微生物群集構造解析を行った. その結果, 16SrRNA遺伝子を標的とした解析では, 既知のトルエン分解であるPseudomonas putidaが全体の約5%を占めており, 主なトルエン分解として考えられた. しかし, 機能遺伝子を標的とした解析結果とは一致しなかった. 今後は. DHSリアクター内でトルエンを分解している微生物のmRNAを視覚的に検出し, mRNA及びrRNAの多重染色を行い, 系統と機能を一致させる予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, プロトコルを最適化したin situ dual HCR法を用いてDHSリアクター内に生息しているトルエン分解菌を標的としてトルエン分解に関与しているmRNAの特異的な検出を行う予定である. さらに, 系統と機能を結びつけることが可能であるrRNAとmRNAの多重染色を行い, 環境中に生息している微生物の系統と機能を一致させていく予定である.
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