研究課題/領域番号 |
13J09876
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芳賀 智亮 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酵素複合体 / 核内増殖抗原 / 超分子 / 足場タンパク質 / ウイルスカプシド |
研究実績の概要 |
先行研究において、Pseudomonas putida由来のシトクロムP450(P450cam)とその酸化還元パートナー(PdR、PdX)を、Sulfolobus solfataricus由来の核内増殖抗原(PCNA)を足場として近接させることで、効率的な多酵素反応を実現している。本研究は、より効率的な多酵素反応を行う多酵素複合体の構築を目的としている。本年度はまず、PdR/PdX/P450cam電子伝達系をモデルとして、PCNA上の酸化還元パートナーの分子数が全体の触媒活性に与える影響を評価した。その結果、電子伝達カスケードの中で律速に関わるPdXの分子数だけでなく、律速に関わらないPdRの分子数もまた、全体の触媒活性に影響を与えることが分かった。従って、より効率的な多酵素反応のためには、多酵素複合体内のすべての酵素の分子数の最適化が必要な場合があるといえる。より多くの分子数の酵素を有する巨大な酵素複合体の構築のために、前年度は、PCNAを多数会合したタンパク質複合体の形成方法を検討していたが、さほど大きな複合体は得られなかった。本年度は次に、中空の巨大なタンパク質複合体であるB型肝炎ウイルスカプシド中に多くの分子数のPdR/PdX/P450camを内包した酵素複合体の構築を試みることにした。まず、カプシドのC末端に融合したペプチドタグを、PdRのN末端に融合したタンパク質タグが認識し、多数のPdRがカプシドに内包されたことを示唆する結果を得た。また、タンパク質タグと酵素を刺激依存的に自己切断されるリンカーで結び、酵素が内包後に外部刺激によって自由に運動できるようにすることにしたが、自己切断反応は酵素活性に影響を与えないことが分かった。これらの結果は、カプシドを用いた巨大な酵素複合体が実現可能であること示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルスカプシド中に多数の酵素を内包できることが示唆され、巨大な酵素複合体の実現可能性を示す結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度PdRがウイルスカプシド中に内包されることが示唆されたが、今後はPdX、P450camについても内包できることを示す。また、内包条件を最適化し、内包効率の向上を目指す。その後、同一カプシド中にPdR、PdX、P450camを内包し、カプシド内で電子伝達反応が起こるかを見る。
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