研究課題/領域番号 |
13J09880
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
川端 美季 茨城大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 公衆浴場 / 湯屋 / 養生 / 衛生 / 社会事業 |
研究概要 |
本研究は、近代日本において衛生規範がいかに構築されたのかを明らかにするために、日常的な生活行為である入浴、理髪、洗濯を行なう場である公衆浴場、理髪所、洗濯場に焦点をあて、これらの施設が衛生化される過程を検討するものである。明治期から戦後の日本の公衆浴場、洗濯場、理髪所が制度化され衛生的性質が定義されてきた歴史を、法規制、言説を中心に、公衆衛生史の観点から分析し、海外の衛生観念と衛生施設との関連性をめぐる一連の研究のなかに位置づけることを目標とする。平成25年度の研究実績は、以下2点に分けられる。 1. これまでの考察をもとに、第114回日本医史学会学術大会で、近代日本の衛生政策に関わった医師や官僚の言説を検討し、「明治期の日本における入浴に対する認識の変容」として報告した。 2. 明治期における衛生的観点からの湯屋に対する制度の位置づけをより明確にするため、湯屋をはじめとする公的な場と病との関係について検討するために、湯屋、人力車、乗合馬車をケーススタディとしてThe Prohibition of Mental Patients from Using Public Services in Modern Japanというタイトルで、XXXIII International Congress on Law and Mental Healthで報告を行なった。 加えて、世紀転換期におけるヨーロッパのPublic Bath Movementの一端を明らかにするために、イタリアとフランスで調査を行ない、また大正期の公設浴場設置を進めた社会事業について調査をさらに進めた。上記に関連して、社会事業史、社会政策、医学、生命倫理などの他領域の研究者と交流を行ない、学際的な知見を得ながら研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公衆浴場の衛生化に関して制度と言説を中心に検討し、健康と入浴に関する認識の歴史的経緯の一端を明らかにすることができた。史料や当時の言説、使用されている衛生概念を丁寧に確認しながら、順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、平成25年度の調査をもとに、公衆浴場が日本の一般民衆への衛生化をすすめるために制度をはじめとする行政の働きかけのなかでの位置づけ及び、制度施行の実態状況について検討し、論文を投稿する。 加えて、理髪所、洗濯場への調査も進め、近代日本における一般民衆の衛生規範の変容を立体的に記述することを目的とする。
|