研究課題
2014年度の前半(4~7月)はフォトンサイエンス・リーディング大学院(ALPS)プログラムの支援によりアメリカ合衆国のマサチューセッツ工科大学のJarillo-Herrero研究室にて研究を行い、マイクロメートルサイズの層状物質薄膜を基盤の狙った位置に転写する技術を身に着けた。帰国後、この転写技術を立ち上げ、実際に試料作製と伝導特性の評価を行った。実際にMoS2の単層薄膜において、SiO2基板と原子平坦なhBN基板上に転写した場合を比較したところ、先行研究と同様に平坦なhBN基板上の試料が高い伝導特性を示す傾向にあることを確認した。また、昨年度観測された遷移金属カルコゲナイド(TMD)からの電流注入円偏光発光現象を論文にまとめ、アメリカ科学振興協会の科学雑誌Science誌に発表した。これらの結果を中心として積極的に国内外の会議で発表を行い、同時に様々な先生方とのディスカッションを行った。また、日本物理学会の依頼によりTMDに関する研究の総説を執筆した。2014年度中は、本研究室に配属になった学部4年生の卒業研究として電流注入円偏光発光現象の研究を進め、TMDの一つである二セレン化モリブデン(MoS2)と呼ばれる物質に置いても同様の結果を観測し、加えて6Kの低温まで発光の偏光状態がどのように変化するかを明らかにした。さらに、TMDの持つバレー以外の自由度であるスピン自由度に着目した研究を開始した。スピン自由度にアクセスするため、スピントロニクスの分野で多用されている強磁性電極に着目し、強磁性体をTMDと接合させた際の伝導特性や磁性の基礎研究を行った。
2: おおむね順調に進展している
今年度はTMDのバレー自由度を利用した電気的制御可能な円偏光発光素子の特性を一部解明することができた。また、国際会議にも多数出席しディスカッションを重ねて知見を広げることができた。
これまでにTMDのバレー自由度を利用した新機能デバイスを実現することができた。そのため、今後はTMDの持つもう一つのスピン自由度に着目し、スピントロニクスの観点からスピン注入やスピンホール効果の検出を行う。また、バレー自由度とスピン自由度の密接な関わりを利用した、新機能オプトスピントロニクスデバイスの開発を行いたいと考えている。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
Scientific Reports
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http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2014/2014042801.html