研究課題/領域番号 |
13J09898
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒井 俊人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ソフトマター / 非平衡物理 / 結晶化 / 複雑流体 |
研究概要 |
荷電コロイド系の結晶化・融解の3次元観察を主な研究課題として行っている。このクーロン斥力による結晶状態はWigner結晶として知られ、結晶は壁面から形成されていくことが多い。そこで、我々は壁からの1軸的な結晶成長の3次元実時間観察を行っている。この結果、局所的に秩序化したクラスターが配向を周囲にあわせるように回転することで成長する結晶成長の様式が観察された。また、結晶ができた後も粒子が協同的に大きく動くことで欠陥が解消されていく様子が見られた。現在は、この結晶化における運動の素過程を明らかにすることで、古典的な結晶化理論を進展させることができるものと期待している。そこで、流体力学やイオンの濃度分布といった自由度を含めたシミュレーションも同時に行うことで、系内のイオン濃度不均一性が結晶化に与える影響などについて現在検討を進めている。 次に、融解過程に関してはWigner結晶を作った後、塩を外部から添加することで, クーロン相互作用を遮蔽して有効半径を縮めることで結晶の融解を引き起こしている。ダイナミクスを初期から観察するため我々は直径3μmの比較的大きい単分散コロイド粒子を合成し、溶媒の密度や屈折率をコロイド粒子にあわせることで重力や van der waals 引力相互作用の影響を最小限にとどめることに成功した。この結晶の融解状態をより適切に評価するため、従来用いられてきたボンド配向秩序変数の定義を非平衡条件下でも用いることができるように拡張し、局所的な構造変化を調べている。この方法を用いることで、融解を駆動する秩序変数や融解時に残りやすい結晶構造の特徴について調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
荷電コロイド系の結晶化や融解の研究に努めている。これらの実験において並進秩序及び配向秩序に着目した研究を行っている。この中で、配向秩序について、よりロバストな定義を与えることに取り組み、ボロノイ面積で配向秩序を規格化する方法を提案した。また、実験だけでは明らかにすることが難しいイオン濃度の分布についての数値シミュレーションにも取り組んでいる。以上から、おおむね期待通り研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した解析方法、シミュレーション手法を用いることで、Wigner系における結晶化や融解の挙動の素過程の研究を更に進めたいと考えている。結晶成長に関しては1軸的な成長の各層における粒子配置・方向に着目し、結晶化における運動の単位がどのようなものか調べていく。また、融解挙動についてはこれまで知られている融解の判定基準と照らし合わせながら、局所的な融解がどのように結晶全体に進展していくか実験的観察を通じて調べていこうと考えている。 また、現在構築したシミュレーション手法を応用することで、電解質高分子における対イオン分布やその揺らぎが凝集構造に与える影響なども調べていきたいと考えている。
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