研究課題/領域番号 |
13J09922
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
砂押 正章 茨城大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 放射線発がん / 被ばく時年齢依存性 / 子ども被ばく / マウスTリンパ腫 / 幼若期 / 細胞増殖制御 / 細胞周期制御 |
研究概要 |
放射線発がんには被ばく時年齢依存性があると考えられているが、その分子メカニズムに関する研究は殆ど行われていない。これまでに研究代表者は、異なる週齢のマウスへの放射線照射により誘発したTリンパ腫の遺伝子変異解析により、幼若期被ばくと成体期被ばくでは原因遺伝子とその変異生成メカニズムが異なることを明らかにした。小児特異的な発がんメカニズムに関するデータは、ヒトにおいても放射線防護の観点から最も必要とされている。そこで本研究では、被ばく時年齢による相違が検出された上記発がん実験と同様の照射条件を用いて、幼若期被ばくによる発がんメカニズムを明らかにする。平成25年度は、放射線誘発マウスTリンパ腫の被ばく時年齢依存性に関する投稿論文の執筆及び追加実験を行った(平成26年4月投稿予定)。それと並行して実験を遂行する予定であったが、平成25年10月に使用予定の実験動物施設においてウイルス感染事故が発生し、当初計画した実験が実施できなくなったため、別施設にて予備実験を行った。予備実験は、飼育環境が異なる条件であったが、当初の計画に沿って照射後2週間と6週間の胸腺の動態を調べた。その結果、これら2つの時期での胸腺重量および細胞数は、非照射と比較すると減少していたが、2つの時期での大きな変化はなかった。放射線照射後の胸腺は一度萎縮し、その後回復することが分かっているため、本照射方法では照射後2週間までに胸腺が急激に回復したことが予想された。以上のことから、本研究では、照射後2週間までの胸腺の回復動態に焦点を絞る必要があることが明らかになった。本研究を達成することにより、胸腺の回復期の動態およびメカニズムおいて被ばく時年齢に依存した相違が検出されれば、将来的には放射線治療時の年齢を考慮した二次がんの予防法・治療法の確立に貢献できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年10月に、実験で使用する予定であった実験動物施設においてウイルス感染事故が発生した。そのため、一度、動物実験を中止および施設を洗浄する必要があり、当初計画の実験を実施することが不可能となったため、当初の計画よりも遅れが生じた。しかし、別施設において実験条件の検討を行い、来年度に実施する実験計画を立案することができたため、来年度には遅れを取り戻すことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年4月現在、動物施設の清掃・消毒・衛生検査は完了し運用開始が可能であるため、早急に動物の飼育を開始し実験結果を得る予定である。現時点での研究の遅れを考慮し、平成26年9月までに実験が完了するように計画を立て直した。また、平成25年度に行った予備実験の結果から、放射線照射直後の胸腺細胞の動態をより詳細に調べる必要があることが判明した。そのため、平成26年度最初の実験では、放射線照射後2週間までの胸腺細胞の動態について明らかにする。その解析結果を踏まえ、照射後の胸腺回復メカニズムを解析するポイントを決定する予定である。加えて、これまでの研究結果及び知見から、幼若期マウスの胸腺細胞では放射線照射後の細胞周期チェックポイント機構が成体期とは異なる可能性が示唆された。そのため、平成26年度は照射直後の胸腺細胞の細胞周期解析を新たな解析項目として加える。
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