研究課題/領域番号 |
13J09994
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河野 卓成 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | アーキア / カルビンサイクル / phosphoribulokinase / 質量分析 |
研究概要 |
M. hungatei PRKの素特性の解析 本研究の申請時までに、非光合成生物であるアーキアMethanospirillum hungateiが有するPRKホモログが、PRK活性を示すことを明らかにしていた。今年度は反応産物の同定を行った。 M. hungatei PRKのRu5PとATPからの反応生成物が、光合成PRKと同様にRuBPであるか検証するために、反応生成物の質量分析を行った。その結果、MS解析によってRuBPに相当するピークが観察された。酵素を添加していないネガティブコントロールでは、このピークは見られず、M. hungatei PRKの反応由来であると判断した。また、このピークを更にMS/MS解析したところ、フラグメンテーションパターンがコントロールRuBPと一致した。これらの結果からM. hungatei PRKのRu5PとATPからの反応産物はRuBPであり、アーキア型PRKは、真のPRKであることが証明された。 アーキアにおけるPRKの普及性の解析 本研究の主な対象であるM. hungatei以外に、4種のアーキア(メタン菌Methanosaeta thermophila, Methanosaeta concilii, Methanoculleus marisnigri及び、超好熱性アーキアArchaeoglobus profundus)が持つPRKホモログタンパク質に関しても、生化学的な機能解明を目的として解析を行った。その結果、4種のアーキア型PRK全てがPRK活性を示した。さらに詳細な酵素学的解析として、M. thermophila、M. concilii PRKを用いて、Ru5PまたはATPに対するK_m及び、V_<max>の測定を行った。その結果、アーキア型PRKの酵素学的特徴の傾向を掴むことができた。全体的にこれまでに報告されている光合成PRKと比較してV_<max>は低いが、両基質に対する親和性は同等か、それ以上で、特にATPに対する親和性が高い傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、本課題研究をまとめるために必要な実験データを数多く取ることに成功した。質量解析による反応産物の同定は、アーキア型PRKの存在を確固たるものにした。また、M. hungateiを含む計5種のアーキアが有するアーキア型PRKが活性を有し、これまで光合成生物のみが有すると考えられていたPRKに、非光合成生物であるアーキア型PRKという新しいグループを生み出すに至った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では非光合成生物であるアーキアにおいて、光合成カルビン回路の鍵酵素が働く、新規炭素代謝経路を予想し、その証明を目指してきた。これまでin vitroの実験系で予想回路のF6PからPGAまで反応が進むことを明らかにしてきた。現在、アーキアの菌体粗酵素溶液を用いることで、in vivoに相当する解析を行っている。この実験結果を含め、年内に論文投稿を予定している。
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