研究概要 |
今年度は第一年度目の研究計画「予測報酬による環境適応型個別化の理論的展開」と第三年度目の研究計画「確率モデルを用いた複数ルールを考慮する一般化手法」について取り組んだ. 第一年度目の研究計画では, 学習分類子システム(以下LCSと呼ぶ)において, 目的を達成するために必要な知識(ルール)のみを識別する個別化手法を提案した. 実データ分類問題による計算機実験の結果, 従来LCSの分類精度を最大27%改善可能であることを示し, 当初の計画通り研究を遂行した. 第三年度目の研究計画では, 確率モデルを用いて複数ルールを同時に考慮するルール生成・削減法を提案した. これは, 第一年度目の研究成果により明らかになった従来の一般化手法の限界を克服するための取り組みである. ベンチマーク問題を用いた計算機実験の結果, 提案法は従来LCSに必要な学習回数を最大61%削減可能であり, メモリ使用量を最大で76%削減可能であることを示した. このような取り組みから, 今年度は次世代データマイニング手法としてのLCSの基盤技術を開発したと評価できる. 具体的には, 個別化手法は, 強化学習問題において従来LCSが不可能であった最適行動学習法を実現可能にした技術である. これにより, 同問題において, LCSの重要な課題である1)学習速度の改善ならびに2)メモリ使用量の削減について有用な解決法を導入したといえる. また, 確率モデルに基づくルール生成・削減法は, 従来の削減法が必要な評価関数や教師データを用いずに削減可能である. これは強化学習問題等の未知環境に適用可能であることを意味し, 同問題において, 従来LCSの分類精度ならびに獲得する知識数を削減せずに, メモリ使用量を圧縮することが可能になった. これらの成果は, 複雑なモデルを用いず簡易なモデルにより高い分類精度を実現可能であることを示しており, 研究目的である解釈性を重視したデータマイニング手法の実現可能性を示唆するものである.
|
今後の研究の推進方策 |
現在, 海外研究機関(イギリス・ブリストル大学)において研究を遂行しており, 本年度は主に同大学にて学習分類子システム(LCS)における挙動解析を通して, 研究目標である実データに適用可能なシステムを提案することを目指す. また, 採択2年度目の研究計画である「準最適解の獲得」は, 実データに存在する雑音に対するLCSの頑健性の改善を目指したものである. しかし, 採択1年度目の研究計画より, 雑音の性質によって, 最適解のみの学習が頑健性が高いことが明らかになった. このため, 最終的に適用する実データに存在する雑音を分析の結果に応じて, 採択2年度目の研究計画を変更する可能性がある.
|