研究概要 |
本研究では, 強誘電体の結晶構造と偏光特性の関係を詳細に明らかにすることによって, 光学顕微鏡に偏光計を組み込んだ簡便安価なシステムで強誘電体の結晶構造を観察することを目的としている. そこで, まずは保有している透過型偏光顕微鏡の光源や対物レンズを見直し, 高空間分解能化および偏光特性の測定精度向上に取り組んだ, 改良した偏光顕微鏡を用いて, 代表的な透光性の強誘電性セラミックスであるPLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)の結晶構造の観察を行った. このとき, 測定サンプルに導電性接着剤である銀ペーストを塗布し, 電界を印加することで発生する結晶構造の変化を観察したところ, 一般的に構造変化が小さいために電気的なメモリ効果が発生しないと言われている組成のPLZTにおいて, 微小な結晶構造の変化にともなって光学的なメモリ効果が発生していることを発見した. さらに, 本手法では, 光を試料に透過もしくは反射させて試料内部の特定の深さまでの偏光特性を測定することで, 結晶構造の3次元イメージングが可能となると考えられる, そこで, まずは強誘電体表面の結晶構造を選択的に観察するための反射型偏光顕微鏡の開発を行った. 当初, 予定していた試料表面での反射光を利用した偏光顕微鏡は, 測定の可否が試料の物性値などの測定条件に左右されてしまうために, 強誘電体表面の結晶構造を観察することは難しいことが分かった. そこで, 三角プリズムの底面にレンズを接合した変形プリズムを用いて, プリズム底面で光が全反射したときに生じるエバネッセント光を利用することを考えた. プリズム底面から空気側に発生するエバネッセント光は, プリズムから数100㎚の空間にのみ存在するため, エバネッセント光を試料に近づけることで試料表面の情報を選択的に取得することが可能である. 以上の原理を利用して, 強誘電体表面の結晶構造を選択的に観察する全反射型偏光顕微鏡を作製し, 実証実験を行った.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に開発した全反射型偏光顕微鏡は試料表面の情報のみを取得するために, これまで用いていた透過型偏光顕微鏡に比べて得られる信号が弱く, 測定精度が悪い, そこで, 今後は, 全反射型偏光顕微鏡の高精度化に向けた結像光学系の再設計や測定データの解析方法の最適化などを行う. また, 現在の測定システムでは測定時間が長く, 強誘電体の結晶構造の動的な変化を観察することは難しい. そこで, ストロボ法のような時間分解計測手法を新たに組み込むことで, 結晶構造の動的な変化を測定する.
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