研究実績の概要 |
まず、ソフトに破れたZ2対称性をもち二重項ヒッグス場が二つある模型に着目し、将来のヒッグス結合定数の精密測定を用いて模型の検証・同定をおこなえるかを研究した。この模型では、湯川相互作用が異なる4つのタイプが存在する。本研究では、hVV(V=W, Z)、hff(f=t, b, τ)、hhh結合をオンシェルくりこみ法を用いて1ループレベルで計算し、hVV結合が1%以上ずれた場合は、hbb結合とhττ合による模型の識別が1ループレベルでも可能であることを示した。また、将来の高輝度LHCやILCでヒッグス結合定数が精密に測定されたときに様々な結合定数の測定データを用いて内部パラメーターを抜き出すシミュレーション解析を行い、模型のパラメーターを精度よく抽出できることを示した。論文はNucl. Phys. Bに掲載された。 また、交付申請書の「研究実施計画」に記載したヒッグス結合定数の輻射補正の研究の他にも、拡張ヒッグス模型に現われる付加的ヒッグスボソンの加速器実験直接探索の研究も実施した。LHC Run-I(√s=7TeV)の同電荷対レプトンのイベント数データを用いて、ヒッグス3重項模型(標準理論のヒッグス場に3重項表現のヒッグス場が1つ加わった模型)に現れる複荷電ヒッグス場(H++)の質量に対し新たな制限を与える研究を行った。同電荷対Wボソンに崩壊するシナリオについて、H++が生成され同電荷対レプトンに崩壊するFiducial断面積についてQCDの高次補正の寄与も含めて計算し、下限値(60-68GeV以上)を与えた。論文にまとめ、Phys. Rev. Dに掲載された。さらにLHC√s=8TeVによる最新の同電荷レプトンのイベント数データを用いて電荷Wボソンに崩壊するシナリオで下限値をつける解析を行い、新たな制限(90GeV以上)を与えた。論文はPTEPへの掲載が決定した。
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