本年度では、酸化セリウム粒界における物性評価を行った。具体的には、粒界における酸素還元反応活性、粒界における酸素空孔形成エネルギー及び酸素拡散について解析を行いました。 (1)本研究ではelectrochemical strain microscopy (ESM)を用いて粒界における局所酸素反応活性を測定した。こその結果、Σ5粒界におけるESM反応がバルク部分より高くなっており、酸素反応活性が高くなっていることが確認された。一方その他の粒界の活性はバルクと同じ値を示していることが確認されました。この粒界は昨年度の解析により、一番酸素空孔量が多く形成された粒界であり、酸素空孔濃度が粒界酸素反応活性に決定的な役割を果たしていることが確認されました。 (2)Mott-Littleton法によりΣ5酸素化学量論組成の粒界およびΣ3粒界における酸素空孔形成エネルギーについて計算を行った。酸素空孔形成エネルギーは粒界のサイトに強く依存しており、酸素の結合状態に強く依存していることが確認された。またΣ5粒界における空孔形成エネルギーが低く、この粒界で酸素空孔が形成されやすい事から、非化学量論組成の粒界が安定であると推測される。 (3) 第一原理NEB法でΣ3粒界を対象として、粒界構造における拡散現象を原子レベルで解析を行った。その結果、粒界における酸素拡散は常にバルクよりも遅くなっていることが確認された。さらに粒界面に平行な方位の酸素拡散が粒界面に垂直な方位よりも有利であることが確認された。 以上今年度では、昨年度得られた酸化セリウムモデル粒界を基に、粒界における物性評価を行い、原子レベルで粒界における機能発現メカニズムを明らかにした。
|