研究課題/領域番号 |
13J10060
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
清水 太郎 徳島大学, 薬科学教育部, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 抗原デリバリー / リポソーム / がん免疫 / 辺縁帯B細胞 |
研究概要 |
本研究は、脾臓の辺縁帯B細胞(MZ-B)によって抗原が濾胞に多量に輸送される新規の抗原送達システムを利用したがん免疫治療の確立を最終目的とする。本提案はPEG修飾リポソームの初回投与の数日後に投与された2回同投与PEG修飾リポソームが、MZ-Bに多量に取り込まれ、濾胞に輸送されるようになるという研究代表者による発見に基づく。当該年度は、PEG修飾リポソームを用いた抗原送達システムの最適化と、モデル抗原を封入した本システムを用いた抗腫瘍免疫誘導能について研究を行った。最適化の結果、1回目投与PEG修飾リボソームの投与量が低投与量であること、1回目投与と2回目投与との投与間隔が3日-7日であることが重要であることが明らかになった。またBalb/c nu-nuマウスにおいても輸送が観察されたため、T細胞非依存的な現象であることが明らかになった。続いて、2回目投与PEG修飾リポソーム内にモデル抗原であるOvalbumin (OVA)を封入して免疫を行い、細胞傷害性T細胞(CTL)の活性化とOVA発現Tリンパ腫細胞(EG7-OVA)の腫瘍成長抑制効果について検討を行った。空のPEG修飾リボソームの投与3日後に、OVA封入PEG修飾リボソームを投与して免疫した。これを1クールとして、2週間おきに3回繰り返し投与した。3クールの免疫を行った場合、空のPEG修飾リボソームの前投与を行うことで、前投与が無い場合と比較してCTLの活性化が有意に増強された。さらに、続いて皮下移植されたEG7-OVAの腫瘍成長を有意に抑制することが明らかになった。このことから、空のPEG修飾リボソームの前投与とOVA封入PEG修飾リポソームによる免疫を組み合わせることにより、OVA特異的なCTLを誘導し、OVA発現腫瘍細胞を傷害できることが示された。以上のように、MZ-Bによる抗原輸送機構を利用した本抗原送達システムは、生体機能の合目的性を活用した理想的な抗原送達システムであり、がん免疫の誘導およびがん治療に有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEG修飾リポソームを用いた抗原送遠システムの調製、免疫スケジュールの最適化は既に完了している。またOVAを搭載した本システムによる免疫により、細胞傷害性T細胞が誘導され、OVA発現腫瘍の腫瘍成長が抑制された。本システムのProof of conceptを達成しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、既存のがん抗原ペプチドWT1を封入したPEG修飾リボソームを作製して、MZ-Bの感作後に免疫を行う。その後、細胞傷害性T細胞やナチュラルキラー細胞によるがん細胞傷害効果、抗腫瘍免疫誘導効果について検討し、既存のがんワクチンの効果と比較検討する。がん抗原ペプチドで有効な抗腫瘍免疫を誘導できない場合には、pDNAを封入して免疫を行う予定である。
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