研究課題
グアニンは4つのDNA塩基のなかで最も容易に酸化損傷を受ける。グアニンを豊富に含む配列のうち、テロメア配列や、がん原遺伝子c-MYCのプロモーター配列をはじめとするいくつかのグアニン豊富な配列はグアニン4重鎖を形成できると考えられている。光増感反応による酸化の場合、1本鎖構造と比べて4本鎖構造中のグアニンは光増感剤との接触面積が減少するため、酸化損傷による生成物の種類や生成量に変化があるのではないかと考え、4本鎖中のグアニンと1本鎖中のグアニンの光反応の違いを明らかにしようと考えた。まず、6 mer DNA d (TGGGGT)を用いて1本鎖、および4本鎖DNAをHPLCによって分離した上で、リボフラビン(RF)存在下光酸化反応を行い、HPLCにより解析を行った。その結果、1本鎖DNAによる光反応によりイミダゾロン(Iz)が主生成物として得られた。一方、4本鎖DNAによる光反応では1本鎖の反応と異なり、オキソグアニジノヒダントイン(Ghox)と8-オキソグアニン(8oxoG)が主生成物として得られることを明らかにした。またこのとき、1本鎖d (TGGGGT)の光反応において、損傷は過去の報告にあった通り4つのグアニンに均等に損傷を生じることを確かめたが、一方で4本鎖d (TGGGGT) 4の光反応では、1本鎖と異なり3'末端に最も近いグアニンにおいて特に損傷の生成量が増加することが明らかになった。この損傷生成の偏りはHOMOの局在化によるものであることを量子化学計算により明らかにした。さらに、2本鎖DNAであるd (TGGGGT)/d (ACCCCA)の光反応を解析したところ、Ghox、8oxoG、Izが主に生成した。以上の結果と過去の文献から考察した結果、グアニンの1位の脱プロトンのしやすさにより、生成する損傷の種類が制御されている可能性を示唆した。
2: おおむね順調に進展している
1本鎖、2本鎖、4本鎖DNAにおける生成した損傷の種類は、脱プロトンの容易さにより制御されていることを発見した。さらに、4本鎖DNAにおける3,側グアニンでの優先的な酸化が、HOMOの局在化に起因することを発見した。その成果をpeer review誌に2報アクセプトされた。以上の取り組みにより、予定どおり博士(薬学)を取得した。
先述のように4本鎖DNAにおける酸化生成物が1本鎖、および2本鎖と異なることを明らかにしたため、さらにこの結果を参考に、生体内で見られる4本鎖形成可能な配列であるテロメアは4本鎖形成時、どのような種類の損傷がどの位置に形成するのかを明らかにする。またその上で4本鎖の安定性やテロメラーゼのDNA伸長にどのような影響を与えるかを考察する。
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