研究概要 |
これまでの研究からグアニン酸化損傷であるオキサゾロン(Oz)は様々なDNAポリメラーゼに共通して相補鎖側にグアニンが取り込まれることが明らかとなっており、G→C点突然変異を引き起こすグアニン酸化損傷である。また、Ozを含むDNAの複製において突然変異が生じないのはグアニン酸化損傷であるOzに対してシトシンが挿入された場合であるが、これまでOzに対してシトシンを優位に挿入するDNAポリメラーゼは見つかっていない。本研究はこのOzから生じるG→C点突然変異の回避機構を明らかにすることを最終目的としており、その可能性を秘めたDNAポリメラーゼとしてREV1に着目した。このREV1は天然塩基やアベーシックサイトを始め様々なDNA損傷に対してシトシンを優位に取り込むDNAポリメラーゼであり(Nature, 1996, 382, 729)、Ozに対してもシトシンを優位に取り込むかを解析する必要があった。 本年度はREV1のリコンビナントを作製し、Ozに対する塩基の取り込み解析を行った。その結果、Ozに対してシトシンが非常に優位に取り込まれることを明らかにした。また、速度論解析を行った結果、代表的なグアニン酸化損傷である8オキソグアニン(8oxoG)よりもOzに対して効率よくシトシンを取り込んだ。8oxoGよりもOzの方がグアニンと構造が大きく異なるにも関わらず、シトシンの取り込み効率はOzの方が天然のグアニンに近い結果となり、非常に興味深い。今後さらなる考察が必要である。以上より、REV1がOzに対してシトシンを優位に取り込むことを明らかにし、Ozから生じるG-C点突然変異を回避する機構において重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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