研究課題/領域番号 |
13J10162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
守屋 亮 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 種実圧痕 / レプリカ法 / 栽培植物 / 雑穀 / 朝光寺原式土器 / 種実遺体 / SEM |
研究概要 |
弥生時代の栽培植物利用の実態を明らかにするため、弥生時代中期から後期を中心として土器種実圧痕レプリカ調査を行った。神奈川県関耕地遺跡(横浜市埋蔵文化財センター所蔵)、神奈川県受地だいやま遺跡(神奈川県埋蔵文化財センター所蔵)、山梨県金の尾遺跡(山梨県立考古博物館所蔵)の調査を行った。これらの調査で採取したレプリカについて、研究室で実体顕微鏡を用いて観察し、選別作業を行った。種実の可能性があるものに関して東京大学総合研究博物館および総合研究大学院大学先導科学研究科所蔵の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察・写真撮影を行った。結果として、関耕地遺跡の特に後期の土器からイネのほかにアワ・キビ等の種実圧痕が検出された。一方で受地だいやま遺跡ではイネの検出が中心で雑穀類は少なく、金の尾遺跡ではイネのみの検出となり、同時期の朝光寺原式土器、中部高地系土器出土遺跡においても差異がみられることが判明した。イネが主たる栽培植物と考えられてきた弥生時代後期においてアワ・キビ等の圧痕が多数検出されることは雑穀栽培の比重が比較的高い地域が存在していたことを示す確実な証拠として重要である。これらの成果は論文「東京湾西岸における弥生時代の栽培植物利用―レプリカ法を用いた調査と研究―」で報告し、広く公開した。 ほかに種実遺体調査として、山形県押出遺跡出土種実の調査を行った。東京大学大学院新領域創成科学研究科において、遺跡出土種実の整理作業を行い、主に種実同定を担当した。押出遺跡は縄文時代前期の低湿地遺跡である。平成24年度調査で遺構・遺物包含層からサンプリングした土壌を水洗選別し、含まれる種実・木材等を検出した。種実についてオニグルミ・クリ・ブドウ属等が検出され、検出数の多寡を記録して日本植生学会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた神奈川県横浜市を中心とするレプリカ調査はおおむね完了した。ほかにも平成26年度以降に行う予定であった中部高地での調査にも取り掛かることができた。一方で東京都で行う予定であったレプリカ調査及び土器編年に関する研究は進まず、課題を残した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は南関東を中心として調査したが、今年度は調査範囲を拡大し関東全域におよび中部高地での調査を行いたい。また25年度に行うことができなかった東京都におけるレプリカ調査と土器編年に関する研究を進めることを課題としたい。さらに、土器に種実圧痕が形成される原因・過程等について、土器焼成実験を通して検討したい。
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